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2019-11-30

Column149 (11/30):国防総省における新規企業との契約(米国)

Column146「国防総省における最低価格での調達(米国)」では、国防総省(Department of Defense、以下「DOD」という)と一部府省における最低価格での調達(lowest price technically acceptable)の採用状況について紹介しました。

今回は、DODの調達における「その他の取引(other transactions)」を紹介します。

はじめに、other transactionsとは何でしょうか?

1980年代後半、防衛に関わる画期的な研究開発を促進するため、議会は一部の研究開発について、DODがother transactionsという特別な調達方法を採用することを認めました。

具体的には、DODのニーズと合致し画期的な技術を有するものの、これまでDODとビジネスをしたことが無い新規企業との研究開発も含めてより強固に技術革新を推進するため、一部の研究開発・試作品の開発・生産について、殆どの連邦調達規則に準拠せず、研究開発ごとに各種条件を決定できるother transactionsを認めたのです。

というのも、これまで新規企業がDODの研究開発に参画する際の課題となっていた点は、契約を締結する際の知的財産権の帰属や、契約までに必要な期間の長さ、政府固有の会計システムの存在等でした。

もちろん、other transactionsを採用できる機関や、other transactionsを採用する際の一定の要件(新規企業を主要契約者や下請者とする等)は設けられています。

ただ、競争的な手続きを経ずに、個別案件ごとに条件やコンソーシアムの形態等を検討できるため、より発注者の裁量が増した手続きと言えるでしょう。

このような裁量が増した手続きであるが故に、各機関では契約前に調達担当者の上長のレビューを必須とする等、比較的細かい手続きを設けています。

米国会計検査院のレポート“DEFENSE ACQUISITIONS: DOD’s Use of Other Transactions for Prototype Projects Has Increased”では、other transactionsを活用した試作品の開発に焦点を当て、これらの契約件数が増加している点、一方で、各担当者の自主的な判断として、契約条件を設定する際のプロセスを書面に残す等、透明性確保に向けた取組も行なわれている点等を明らかにしています。

日本でも、J-Startupをはじめとするベンチャー企業の入札機会拡大に向けた取組が行われています。

ただ、新規企業の更なる活用を促すならば、other transactionsのような取組と厳格なレビューを制度化することも一案かもしれません。

(参考資料)
GAOウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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