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2020-08-22

Column164 (8/22):中小企業との下請計画に係る会計検査事例(米国)

Column15「地域における中小企業の受注機会の促進(米国)」では、地域の中小企業の受注機会促進に向けて、 米国中小企業庁(Small Business Administration、以下SBAという)の6つの地域事務所に、中小企業からの相談等を受け付ける「調達センター担当者(Procurement Center Representatives、以下PCRという)」が配置されていることを紹介しました。

また、Column163「中小企業の受注に係る会計検査事例(米国)」では、米国会計検査院(Government Accountability Office、以下GAOという)がPCRの活動状況等について検査した事例を紹介しました。

今回は、中小企業の受注を促進するため、元請契約者が作成する中小企業との下請計画(Subcontracting Plan)の作成状況及びSBAによる下請計画のレビュー状況等をGAOが検査したレポート“Oversight of Contractor Compliance with Subcontracting Plans Needs Improvement”(2020)を紹介します。

はじめに、連邦政府では、交渉及び価格競争の結果、700,000ドル(約7,700万円、但し工事は150万ドル)超の契約では(中小企業との下請契約の可能性がある場合)締結した元請企業(大企業)に対して、下請計画の作成や計画の達成状況の報告を義務付けています。

2019年度に下請計画の作成が求められた契約は5,000件以上、金額にして3,000億ドルとのことです。

元請契約者は、下請計画の達成状況を契約担当官に報告し、未達成の場合は理由を説明する一方、契約担当官は元請契約者が下請計画に沿って適切な努力をしていたかを判断することになっています。SBAは、これら元請契約者と各府省契約担当官に対するトレーニングやレビュー等の役割を有しています。

GAOの検査で明らかになった点は主に以下の点です。

1. 検査に当たり、GAOは4府省の26契約を抽出し、下請計画の作成状況等を確認しています。その結果、約半数の下請計画について、SBAの6つの地域事務所に配属されているPCRのレビューを受けていないことが明らかになりました。

契約担当官は、下請計画の作成が求められる契約を締結した後、PCRに契約のレビューを求め、中小企業の参加可能性を高めるための指摘を受けることとなっていますが、この手続きが行われていなかったとのことです。

2. 4府省の26契約のうち14契約で、契約担当官は下請計画の達成状況等について正しく報告を受けていないことが明らかになりました。例えば、いくつかの契約では、計画時の目標と異なる内容が実績報告に掲載されているものの、計画と実績の違いについての説明がなされないまま契約担当官が実績報告を承認していたものがあった、ということです。

3. さらに、SBAは下請計画の作成や報告状況等についてレビューする役割を有していますが、2016〜2018年度の間、レビューに係る書類や情報を作成していなかった、とのことです。これについて、SBAは新たなレビュー手続きを策定したとしていますが、2020年3月中旬時点では十分な改善が図られていない、とのことです。

日本では、連邦政府が求めているような、大規模な契約を締結した元請契約者に対して下請計画の作成等を義務付けていません。

ただ、官公需法で求める中小企業の受注機会の促進を我が国でもさらに進めようとするならば、下請計画の作成及び達成状況の報告と、GAOが果たした適切な手続きの確保に向けた検査・監督、このような取組も有効かもしれません。

(参考資料)
U.S.Small Business Administrationウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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