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2022-01-07

Column178(1/7):SBIR/STTRの執行における適時性(米国)

Column62「イノベーション促進に向けた公共調達(5)(米国)」では、イノベーションの促進に向けて公共調達を活用する、米国連邦政府の取組を紹介しました。

米国連邦政府において、中小企業等のイノベーションを促進・支援する主な制度は、Small Business Innovation Research(以下、「SBIR」と略称)と、Small Business Technology Transfer(以下、「STTR」と略称)です。

SBIR、STTRは共に、連邦政府研究開発費により、技術力を有する中小企業等の研究開発・商用化を促進するためのプログラムです。

両プログラムの主な内容は、Column62「イノベーション促進に向けた公共調達(5)(米国)」で紹介しました。

また、Column84「SBIR/STTRの参加要件(米国)」では、SBIR、STTRに参加する際に設けられた要件の一部(過去に両プログラムを利用した一部の企業を対象に、最低限のパフォーマンス基準を設定)を紹介しました。

今回は、SBIR、STTRの執行状況について検査した会計検査院のレポートGAO(2021)“Small Business Research Programs: Agencies Should Further Improve Award Timeliness”を紹介します。

はじめに、SBIR、STTRの政策指示(policy directive)では、SBIR、STTRに参加する11省庁のうち9省庁に対して、採択された中小企業等と契約を締結又は補助金を交付する際、提案締切から採択の通知までを90日以内に、提案締切から契約内容等の交渉を経て資金提供するまでを180日以内に行うことを推奨しています(11省庁のうちNIHとNSFは1年以内を推奨)。

GAOが、SBIR、STTRに参加した省庁の2020年度のSBIR、STTRの契約の一部を確認したところ、2017年度と比べると2020年度の実績は改善しているものの、半数程度の省庁で、“採択の通知まで90日以内”の期限が守られていないこと、また、3分の2の省庁で、“資金提供まで180日以内”の期限が守られていないことが明らかになりました。

期限が遵守されていない理由としては、採択企業の倒産や辞退、企業側の返答の遅延等、企業側の事情もあるものの、採択の通知を受けてから資金提供までに複数のプロセスが存在すること(プログラムマネージャーや契約担当官等による確認、採択企業の追跡番号の付与等)も挙げられていた、とのことです。

米国中小企業庁(Small Business Administration)は、このような資金提供までの期間の遅延は、中小企業等の研究開発スピードに悪影響を与えると指摘しています。

GAOは、これを受けて、適時に採択先を通知し資金提供するために有効な策を検討すること等を省庁に勧告しています。

日本でも昨今、SBIR制度の大幅な見直しが行われましたが、上記のような採択企業に対する資金提供の適時性をフォローする仕組みも有効かもしれません。

(出典)
Small Business Administrationウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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