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2018-01-19

Column81 (1/19):公共調達の参加資格(米国)

Column72「中小企業の受注機会促進に関する検査事例(米国)」では、中小企業の受注機会促進に関わる米国会計検査院(Government Accountability Office、以下「GAO」という)のレポート“SMALL BUSINESS CONTRACTING: Actions Needed to Demonstrate and Better Review Compliance with Select Requirements for Small Business Advocates”(2017)を紹介しました。

今回は、連邦政府の公共調達の参加資格として使用されている産業分類コード「North American Industry Classification System(以下、「NAICSコード」という)」の設定状況等について検証したGAOのレポート“SMALL BUSINESS CONTRACTING:SBA Efforts May Clarify the Assignment of Industry Codes, and Most Code Appeals Were Dismissed”(2017)を紹介します。

はじめに、米国連邦政府では、契約担当官が契約毎に契約締結可能な企業のNAICSコード(産業分類と企業規模基準を含む)を決定します。

日本で、契約担当官が入札の参加要件の1つとして参加等級を決定しているようなイメージです。

ただ、米国連邦政府では、Column3「公共調達における付帯的政策(1)(米国)」で紹介したとおり、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達について(一部例外あり)、特定のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、契約を締結することが義務付けられています。

set-asideの対象となる契約で、どのようなNAICSコードが設定されるか?、中小企業にとっては大きな問題でしょう。

また、米国連邦政府では、数量未確定契約という、調達時期や数量が未確定な包括契約の締結が可能です。

具体的には、1者又は複数の企業と基本契約を締結し、その後、ニーズに応じて複数回入札・随意契約で受注が決定されるため、当初の基本契約を締結する時点でどのようにNAICSコードを設定しているのか?、この点も検証されています。

なお、米国連邦政府のNAICSコードは産業と企業規模で分類されているため、日本の参加資格(例えば、省庁統一参加資格はA〜Dの4等級)よりも細かい区分で設定されており、日本に比べて、契約毎に参加可能な企業がより絞り込まれていると言えるでしょう。

検証対象は、数量未確定契約の多い4省庁の2011年度〜2015年度の契約で、調達計画や市場調査等の入札関連文書の分析、契約担当官やsmall business specialist等、関係者へのインタビュー調査等により検証されています。

検証の結果、契約担当官は、数量未確定契約を含めて、公告前にNAICSマニュアルやNAICSコードの分類に関わる市場調査、過去又は類似案件のNAICSコード、調達対象の重要性、small business specialistからのアドバイス等、様々な情報を基に各契約のNAICSコードを決定していること、様々な情報を基にしても類似案件で異なるNAICSコードが設定されている現状があること、複数者契約のNAICSコードの設定に関わる改定(1つの案件で複数のNAICSコードの設定を可能にすること)に合わせた対応が進行中であること等が明らかにされています。

日本でも、契約担当官が会計法令及び内規等に基づいて、参加等級を決定しています。また、調達改善の一環として、参加等級を拡大する取組等も行われています。

参加等級に応じて、参加可能な企業が入口で選別されるため、これら参加等級が業務内容や入札参加状況等に応じて適切だったのか?、契約履行後に検証したり、NAICSコードは5年毎に又企業規模規準は3分の1のコードを18ヶ月毎に見直すこととなっていますが、日本の競争参加資格についても、そもそも参加等級の付与基準は適切なのか?、定期的に検証する等、参加等級に関わる継続的な見直し・改善は重要ではないでしょうか。

(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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