Column77 (12/27):イノベーション調達に関する指針(EU)
Column56「イノベーション促進に向けた公共調達(4)(EU)」やColumn70「イノベーション調達に関する通達(EU)」では、イノベーションの促進に向けて、公共調達を活用するEUの取組を紹介しました。
今回は、現在、意見募集を行っている、イノベーション調達についてのEUの指針 “Guidance on Public Procurement of Innovation”を紹介します。
なお、同指針は、既存の指針を分かりやすく補足するもので、改定版ではないとのことです。
指針は、大きく以下の4つの項目から構成されています。
1.イノベーションとは?(Getting acquainted with public procurement of innovation)
2.イノベーション調達に関する政策とは?(Making innovation part of the policy)
3.イノベーターを引き付けるためには?(事務の簡素化等)(Attracting innovators)
4.イノベーションを引き起こすためには?(発注方法の工夫等)(Attracting innovation)
興味深かった点の一つは、上記の「4.イノベーションを引き起こすには?」のなかで言及されている“落札基準”の事例です。
指針では、価格と質の両方を評価して落札者を決定する際、価格と質の割合を工夫することで、イノベーティブな調達を行える可能性がある点を指摘しています。
上記の説明の補足として、事務用プリンターの事例が挙げられています。
もちろん、日本と同様に、価格による調達が多いようですが、調達する部局の特性や発注者による政策的な活用の意向(障がい者雇用の促進等)等に応じて、以下の点を考慮した、いわゆる総合評価による事務用プリンターの調達も行われているようです。
a.アフターサービス
b.保証期間
c.電力消費
d.リサイクルコスト
e.雑音のレベル(美術館と郵便局では異る基準の設定が考えられる等)
f.ユーザーフレンドリー
g.リサイクル材料の使用有無
h.製造過程における障がいのある者の雇用有無
事務用プリンターの総合評価を直ぐに導入する必要がある、とは思いませんが、発注ごとに、どのような調達方法が妥当か?(価格競争方式か総合評価方式か等)、市場動向を踏まえて競争性は確保できるか?、その調達により何を実現できる可能性があるか?(製品のイノベーション等)など、前例踏襲ではなく、常に新しい視点で、調達方法を検討し続けていくことは重要ではないでしょうか。
(出典)
EUウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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