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2020-12-03

Column170(12/3):イノベーション調達の事例(EU)

Column70「イノベーション調達に関する通達(EU)」では、イノベーションの促進に向けて公共調達を活用するEUの取組を紹介しました。

Column80「イノベーション促進に向けた公共調達(8)(EU)」では、政府機関等でニーズがあるものの、市場で販売されていない革新的な製品やサービスを調達するため、政府機関等が製品やサービスの開発・試作を発注するイノベーション調達(Pre-Commercial Procurement、以下「PCP調達」という)の取組と効果を紹介しました。

今回は、PCP調達の取組事例を紹介します。

フィンランドでは、自動運転のミニバスシステムに係るPCP調達のプロジェクト(FABULOS PROJECT)が実施されています。

プロジェクトには6つの公的機関が参画し、自動運転のミニバスシステムの運行に向けて必要なソフトウェア、ハードウェア、車両、サービスの全てを一括調達することが予定されています。

現在、同プロジェクトにより開発された3種類の車両が30キロ程度の一般道路で実証実験されているとのことです。

実証実験に至るまでのプロセスとしては、初めに、マーケットコンサルテーションが実施され、次の段階に進む5つのコンソーシアムが選定されています。

段階は、第一にソリューションデザインの段階、第二にプロトタイプの製作やラボでの実験段階、第三に実証実験段階から構成され、各段階で選抜された3つのコンソーシアムが実証実験段階に進んでいます。

実証実験後に再びソリューションの選択が行われ、選択されたソリューションについて参加自治体が入札を行い、最終的な事業者が決定されます。

参加企業にとっては入札に至るまでに多大なコストが発生しますが、選択されたソリューションは初めの事例になること、金銭的支援があること、知的財産が企業に帰属すること、が参加インセンティブになっているようです。

複数のサプライヤー・コンソーシアムと研究開発を進めながら、最終的には入札で決定することで、競争性・公平性・透明性が確保されると思いますが、このような長期にわたるプロセスに複数のサプライヤー・コンソーシアムが参画するためには、参加者にとってのインセンティブ設計(初めの事例になること、金銭的支援、知的財産の帰属)をどうするか?は非常に重要になるでしょう。

(出典)
ICLEIウェブサイト、FABULOS PROJECTウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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