Column16 (10/18)：公共調達における付帯的政策（2）（米国）

Column3「公共調達における付帯的政策（1）（米国）」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル～150,000ドルの調達について（一部例外あり）、以下のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside（中小企業向けの留保）を適用し、自動的にそれら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。

＜set-asideの対象＞
・8（a）Business Development
・HUBZone Program
・Woman Owned Small Business Program(includes Economically Disadvantaged Woman Owned Small Business concerns)
・Service Disabled Veteran Owned Program

上記のプログラム・カテゴリーのうち、「8（a）Business Development」では、Column4「8(a) Business Development Program （米国）」で紹介したとおり、SBAの委託先（メンター企業）から公共調達に参加するための各種支援（経営支援、マーケティング支援等）を受けることができます。

このようなメンター企業からの各種経営支援の提供は、これまで「8（a）Business Development」のプログラムのみで実施されていました。

しかし、2010年Small Business Jobs Act及び2013年度National Defense Authorization Actを受けて、Column5「HUBZone Program （米国）」で紹介したHistorically Underutilized Business Zones、Column7「Woman Owned Small Business Program（米国）」で紹介したWomen Owned Small Businesses、Column9「Service Disabled Veteran Owned Program（米国）」で紹介したService Disabled Veteran Owned Businessesを含む、全ての中小企業を対象として、新たなプログラム（All Small Mentor-Protégé Program）が実施されることとなりました（現在は2種類のMentor-Protégé Programが実施されています）。

具体的には、一定の要件を満たすメンター企業と中小企業の両方を募集し、要件を満たしたメンター企業が、支援対象となる中小企業に、会計やマーケティング等の経営面の支援、投資や貸付等の財務面での支援、共同体での応札等の調達面での支援等、各種経営支援を行うものです。メンター企業と支援を受ける中小企業は、事前に支援のゴール及びゴールに向けての計画やタイムライン等に合意（Mentor-Protégé Agreements）することになっています。

中小企業にとっては、このような手厚い支援を受けられるのはメリットがあると考えられますが、メンター企業のメリットは何でしょうか？

それは、新たなプログラム（All Small Mentor-Protégé Program）においては、メンター企業が規模の大きい営利企業であることも認められ、メンター企業が単独では参加できない（中小企業のみ参加可能な（適用される））set-aside等の案件に共同体として参加できるようになったことです。また、メンター企業と中小企業の合意（Mentor-Protégé Agreements）後、メンター企業が中小企業の4分の1の持ち分を取得することも認められることとなりました。もちろん、メンター企業に対しては、責任をもって支援を行うことや確実に中小企業に価値を提供すること等も併せて求められています。

企業間での支援の仕組みと支援によるメリットを制度として提供し、企業間の支援により中小企業の公共調達を含む競争性を向上させようとする取組は、我が国では見られず、注目すべき取組と言えるでしょう。

（参考資料）
U.S. Small Business Administrationウェブサイト
Vedder Priceウェブサイト（SBA Expands the Mentor-Protégé Program to All Small Business Contractors）

Social Policy Lab㈱
川澤良子