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2022-01-17

Column179(1/17):賃上げ実施企業への加点(日本)

日本の公共調達では、調達における公正性、厳正性、経済性を確保することが求められています。さらに、この公正性、厳正性、経済性との調和を前提として、一定の政策目的を達成するための配慮を行うことも求められています。

様々な政策的目的を実現するために契約の場を活用すること、いわゆる「付帯的政策」が推進されているのです。

例えば、Column138「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(7)(日本)」等で紹介したように、女性活躍推進に取り組む企業を入札で高く評価したり、発注先候補となる機会を増やすことで、企業の女性活躍を推進しています。

昨年12月17日、新たに財計第4803号「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置について」が各府省庁宛に発出されました。

賃上げを実施する企業を公共調達において優遇する取組です。

具体的には、本年4月1日以降に契約を締結する総合評価落札方式の調達において、事業年度または暦年単位で、従業員に対する賃上げの目標値(大企業3%、中小企業等1.5%)以上の賃上げを表明した事業者を総合評価において加点するというものです。

加点を希望する入札参加者は、賃上げを従業員に対して表明した「表明書」を提出し、表明した率の賃上げを実際に実施したかどうかは、事業年度等が終了した後、各府省庁が速やかに「法人事業概況説明書」等により確認する、とされています。

上記の女性活躍推進に向けた公共調達の活用では、厚生労働省が別に定める認定プロセスにより各企業の認定が判断され、個々の契約ではその認定の有無を確認するだけです。

一方、今回の賃上げ実施企業の優遇は、入札時に賃上げの「表明書」を受領した場合、当該企業を加点し、その賃上げの結果を事後的に、かつ、契約ごとに発注者が確認するという膨大な事務作業が発生します。

そのようなケースが無いことが望ましいですが、「表明書」を提出したものの実現できない場合の事後的なペナルティを課す事務作業も発生することになっています。

電子調達システムの更なる活用や押印の廃止等により、調達事務の効率化が進められていますが、今回の賃上げ実施企業の優遇はこのような発注者・受注者双方の事務の効率化には逆行する取組と言えるでしょう。

米国連邦政府に目を転じると、CPARS(Contract Performance Assessment Reporting System)という契約の業績評価システムが存在します。

企業の契約ごとの業績を発注者が評価し、企業側もその評価について意見を申し出るオンラインの仕組みです。

今後も様々な「付帯的政策」が推進されると考えると、日本でも、政府と契約を締結する企業の個々の契約の業績評価に加えて(現在の業績評価の仕組みも更なる検討が必要ですが)、企業全体の評価(女性活躍推進や情報管理、賃上げの実施等)を一元的かつリアルタイムに管理し(※)、発注者・受注者双方の事務コストを抑制する仕組みも一案ではないでしょうか。

※国等の競争に参加するための全省庁統一資格審査において、企業全体の評価(女性活躍推進や情報管理、賃上げの実施等)を行うことも考えられますが、同審査は3年に1度審査が行われるため、リアルタイムでの管理が可能な仕組みの検討だと思います。

(出典)
CPARSウェブサイト、財務省ウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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