Column174(2/18):コロナ禍におけるHUBZone企業の認定要件見直し(米国)
Column165「新型コロナウイルス関連の調達に係る会計監査(英国)」、Column166「新型コロナウイルス関連の調達に係る会計検査(2)(米国)」では、英国会計検査院(National Audit Office)や米国会計検査院(Government Accountability Office)が、新型コロナウイルスに関連する調達についてどのような対応(会計検査等)をしているのか、紹介しました。
また、Column158「新型コロナウイルス関連のサプライヤーカタログ(英国)」、Column159「新型コロナウイルス関連の地方政府への調達支援(英国)」では、英国内閣府が所管するエージェンシー(executive agency)の一つ、Crown Commercial Serviceによる新型コロナウイルス関連の調達支援策を紹介しました。
今回は、米国中小企業庁(Small Business Administration、以下SBAという)が、新型コロナウイルスへの対応として、HUBZone企業の認定要件をどのように見直したか、紹介します。
初めに、Column5「HUBZone Program (米国)」、Column131「HUBZone Programに関する外部評価(米国)」で紹介したとおり、HUBZoneとは、歴史的低開発地域(historically Underutilized Business Zone)の略称で、HUBZone地域に所在し、一定の条件を満たす中小企業(以下、「HUBZone企業」という)は、米国連邦政府の3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)で優遇を受けることができます。
具体的には、set-aside(中小企業向けの留保)、単独契約(sole selection)の適用、公開競争(full and open contract competition)の価格評価(元請・下請の両方)における10%の優遇(競争相手が明らかに中小企業である場合を除く)です。
なお、HUBZone企業は、企業要件や地域要件(※)を基に、定期的に認定が見直されます。
※失業率や貧困率等の統計データを基にHUBZone地域を決定。
新型コロナウイルスへの対応として、SBAはHUBZone企業の認定について、例えば、以下のような要件緩和を行っています。
・一時的な認定期間の延長
・HUBZoneに居住していた社員(大学生)が、学生寮の閉鎖により移動した場合でも一時的にHUBZoneに居住している社員として認定すること
・新型コロナウイルスに対応して一時的に解雇した社員についても、再雇用の意思がある場合、雇用を継続していると認定すること /等
日本では、HUBZone Programのように、特定の地域に所在し、一定の雇用条件を満たす企業を認定し、調達で優遇するようなプログラムはありません。
ただ、新型コロナウイルスへの対応として、テレワークの推進等、企業の雇用環境が大きく変わるなか、例えば、これまでは本社や営業所が当該地域に立地し雇用を創出している企業を優遇していたもの(地域要件)が、テレワークが進めばある意味、拠点がなくとも地域で雇用を創出する企業は増えるかもしれません。
果たしてこれからも同じ内容で地域要件を設定することが、本来の要件設定の目的に叶うのか?
企業の立地だけではない評価基準(例えば、社員の実質的な就業場所)も検討する等、新型コロナウイルスに対応した見直しも必要かもしれません。
(出典)
Small Business Administrationウェブサイト
国土技術政策総合研究所資料第908号「英国・米国における包括・個別二段階契約方式-フレームワーク合意方式(FA)と数量未確定契約方式(ID/IQ)-」
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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