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2020-05-02

Column158 (5/2):新型コロナウイルス関連のサプライヤーカタログ(英国)

Column157「ウェブ会議開催に向けた調達支援(英国)」では、英国の新型コロナウイルスへの対応として、地方政府が開催する市民集会(public meeting)をビデオ会議等のバーチャルな方法で開催するようになったことと、ビデオ会議開催に向けた調達支援としてフレームワーク合意の活用が示されていることを紹介しました。

今回は、英国中央政府の調達における新型コロナウイルス対策のその他の取組を紹介します。

英国では、英国内閣府が所管するエージェンシー(executive agency)の一つ、Crown Commercial Service(以下、CCSという)が、調達達政策において重要な役割を果たしています。

具体的には、中央政府や地方政府、それ以外の公的機関が共通して調達するモノ・サービスのフレームワーク合意(※)に関わる調整や、中小企業の公共調達への参加促進等、各機関の調達改善に向けた様々なサポートをしています。

※:フレームワーク合意とは、「2006年の英国公共契約規則に規定された“長期指名候補者と事前合意制度”のことで、長期指名候補者(フレームワーク企業)を選定した上で、これら企業との間で一定期間内の個別発注(コールオフ)に関する受注者及び契約額の決定方法、契約条件等(フレームワーク)に予め同意する方式」です。

CCSは、新型コロナウイルスに関連する調達への支援として、例えば、以下のような取組を行っています。

・CCS内にいる各調達分野の専門家によるメールでの問合せ受付

・新型コロナウイルスに関連する緊急調達に活用するためのサプライヤーカタログの作成

サプライヤーカタログは、「提供できる地域」、「モノ/サービスの区分」、「モノ/サービスの詳細区分(ソフトウェア、パソコン等)」、「モノ/サービスの概要」、「コストの特徴(reduced, standard, other等)」、「サプライヤー名」、「連絡先」で整理されています。

CCSに寄せられた何千のサプライヤーからの情報(新型コロナウイルスに関連するサービス/モノとしてどのようなものが提供できるか等)を、CCSが内容確認し、追加情報を収集した上で、カタログとして情報を整理しています(防護服等の調達は対象外)。

CCSは、緊急調達においてまずは既存のフレームワーク合意を活用した調達を推奨していますが、それでは調達が困難な場合、各公的機関がそれぞれサプライヤー情報を収集するといった、ある意味、不効率な時間の使い方ではなく、CCSが専門的な知見を生かしてサプライヤー情報を一定程度確認し、検索サイトに情報を集約することで、迅速かつ効果的な調達ができるよう支援しているのです。

緊急時であってもより良い調達、調達の適切性を確保するために、CCSによるサプライヤーカタログ作成といった支援が行われていると言えるでしょう。

もちろん、CCSも、短期間でサプライヤーカタログを作成しているため、サプライヤーのモノ・サービスの内容について十分確認できていない点には言及しています。

日本でも様々な公的機関で新型コロナウイルスに対応した緊急調達が行われていると思います。

調達の迅速性と適切性を両立するため、調達改善を担う内閣官房等が緊急調達の必要なモノ/サービスのサプライヤー情報を整理し、サプライヤーカタログを作成する等といった支援も重要ではないでしょうか。

(出典)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
国土技術政策総合研究所資料第908号「英国・米国における包括・個別二段階契約方式-フレームワーク合意方式(FA)と数量未確定契約方式(ID/IQ)-」

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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