Column156 (3/29):公共工事のフレームワーク合意(英国)
Column42「上下水道のフレームワーク合意(英国)」、Column93「上下水道のフレームワーク合意の事例(英国)」では、英国で新たに導入された上下水道のフレームワーク合意の概要と事例について紹介しました。
今回は、同じく英国で新たに導入されたフレームワーク合意の一つ、公共工事のフレームワーク合意を紹介します。
はじめに、フレームワーク合意とは、「2006年の英国公共契約規則に規定された“長期指名候補者と事前合意制度”のことで、長期指名候補者(フレームワーク企業)を選定した上で、これら企業との間で一定期間内の個別発注(コールオフ)に関する受注者及び契約額の決定方法、契約条件等(フレームワーク)に予め同意する方式」です。
英国内閣府が所管するエージェンシー(executive agency)の一つ、Crown Commercial Service(以下、CCSという)は、英国内の全ての公的機関が利用できる公共工事に関わるフレームワーク合意を結びました。
具体的には、庁舎、学校、大学、病院、刑務所等の建設や改修、建物の取り壊し等の際に利用できるフレームワーク合意です。
フレームワーク合意の基本的な考え方は、契約に関わる事務コストを削減すること、イノベーションを促進すること、2050年迄にCO2排出量ゼロの目標達成を見据えた取組であること等が挙げられています。
フレームワーク合意の相手方は合計128社で、このうち中小企業は58社含まれているとのことです。
契約ロットについては、市場環境や価格帯を踏まえて、地域ごと(North England、South England等)のサブロットを設定し、サブロット毎にサプライヤーを選定しているものもあります(例えば、Construction Works and Associated Services等)。
これは、地域の中小企業と大企業の競争環境を等しくするための配慮のようです。
フレームワーク合意の期間は契約ロットにより異なりますが、最大7年間のものもあります。
選定された中小企業にとっては、長期にわたる契約環境の見通しが立ち、人材育成や新技術等への投資が可能になるかもしれません。
日本でも公共工事の発注においては、指名競争契約から競争契約への移行の中で、質の確保、担い手の確保に向けた様々な取組がされています。
新たな発注方式の導入においては、様々な論点がありますが、英国のフレームワーク合意のような取組も、日本の公共工事の発注方式を検討する上で参考になるかもしれません。
(出典)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
国土技術政策総合研究所資料第908号「英国・米国における包括・個別二段階契約方式-フレームワーク合意方式(FA)と数量未確定契約方式(ID/IQ)-」
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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