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2020-02-19

Column153 (2/19):外部委託に係るガイドライン(英国)

Column117「契約先の経営破綻(英国)」では、英国中央政府等と数多くの契約を締結していたCarillion社が経営破綻に至るまでの経緯を検査した2018年の英国会計検査院のレポート“Investigation into the government’s handling of the collapse of Carillion”を紹介しました。

このCarillion社の経営破綻や複数の委託先企業の経営状況の悪化等を踏まえ、英国内閣府の一組織であるGovenment Commercial Function(※)(Column152「調達改善に向けた知見の共有(英国)」で紹介)は、政府が“何を”“なぜ”“どのように”外部委託しているのかを広く調査し、発注者である政府機関とサプライヤー双方の協力を基に、2019年、外部委託に係る戦略“The Outsorcing Playbook”を公表しました。

※Govenment Commercial Functionは、政府全体におけるモノ・サービスの調達や契約管理等に関わる能力向上を目指す内閣府の一部局です。

今回は、この外部委託に係る戦略“The Outsorcing Playbook”の概要を紹介します。

外部委託に係る戦略“The Outsorcing Playbook”では、各機関が新たに11の取組を実施することで、「プロジェクトの適切な開始」「着実な調達戦略の展開」「健全なマーケットとの協働」「政府機関との取引を希望するサプライヤーとの契約」「状況の悪化に備えた適切な対応」が実現するとしています。

なお、“The Outsorcing Playbook”の活用は、公共工事等の調達においては必須のツールではないものの、有効に活用し得るものと位置付けられています。

それでは、各機関での実施が期待される新たな11の取組とは、どのようなものなのでしょうか?

全ての調達案件と複雑な調達案件(発注者が政府のみで競争制限的な調達案件等)について、以下の新たな取組を実施することが期待されています

1.全ての調達案件について

・Publication of Commercial Pipelines:全ての中央政府機関で今後長期に渡る調達予定を公表すること(これによりサプライヤーの早期の準備が可能)

・Market Health and Capability Assessments:全ての外部委託案件で、発注の準備・計画段階(初期段階)からマーケットの健全性・実行可能性を評価すること(マーケットの限界等を認識することで、発注単位の分割が競争性やマーケットの健全性に寄与するか等の判断が可能)

・Make versus Buy assessment:外部委託の前に、自らサービスを実施すべきか、外部から調達すべきか検証すること

・Key Performance Indicators:全ての新たな外部委託案件について、案件の規模や複雑性に応じた業績指標を設定し、3つは公表すること

・Risk Allocation:政府機関とサプライヤーとの間で適切なリスク分担を行うこと

・Pricing and payment mechanisms:リスク分担に応じた適切な価格決定や支払いを行うこと

・Assessing the Economic and Financial Standing of Suppliers:契約期間にわたるサプライヤーの倒産リスクを評価し、倒産リスクが最低基準をクリアすること

・Resolution Planning:重要な公共サービス契約のサプライヤーに、破綻処理計画の情報提供を求めること

2.複雑な調達案件について

・Project Validation Reviews:以前は政府の主要プロジェクトだけに求められていたプロジェクトの事前評価(Project Validation Review)を全ての複雑な調達案件について実施すること

・Should-cost modelling:全ての複雑な調達案件について、上記の“Make versus Buy assessment”の1プロセスとして、サービスの提供方法(例えば、内製化、外部委託)によりどの程度コストが発生するか検討すること

・Requirement for Pilots:初めて外部委託する場合は、サービスの提供方法についてまずは試行すること

上記はCarillion社の経営破綻の経験を踏まえて、リスク分担等にも力点が置かれています。ただ、全体としては、新たなというよりは、これまでも取り組まれてきた内容かもしれません。

しかし、各機関で当たり前のように取り組まれている改革・改善や調達に係る各種勉強会・研修の蓄積を、政府全体で共有・履行していくには、英国中央政府の“The Outsorcing Playbook”のように、調達プロセスに沿って、またサプライヤーの意見も取り入れて、改めて整理するような戦略・ツールも有効ではないでしょうか。

(参考資料)
Govenment Commercial Functionウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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