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2019-06-28

Column133 (06/28):Acquisition Innovation Lab(1)(米国)

Column132「Procurement Innovation Lab(米国)」では、国土安全保障省(Department of Homeland Security)で取り組まれているイノベーション促進に向けた取組“Procurement Innovation Lab”を紹介しました。

今回は、連邦政府全体のイノベーション調達を促進する取組“Acquisition Innovation Lab”を紹介します。

2016年大統領令は、調達現場におけるイノベーション促進の文化を醸成するため、主要な24府省において以下のような取組を進めるよう求めています。

1.新たな調達実務(市場調査や調達計画の立案、契約管理等、あらゆる調達実務における最新の取組)を試行したり、新たな調達実務の研修の場を提供したりする、Acquisition Innovation Labもしくは類似の場を設けること

ただし、Acquisition Innovation Labの組織の在り方や担当職員の数等については各府省の裁量に任せ、既存の取組との連携や拡張といった形でも許容されるとしています。

2.Acquisition Innovation Labの取組を推進するための核となる職員(acquisition innovation advocate)を任命すること

3.各府省のデジタル技術に関わる調達スキルを向上させるため、政府横断的なデジタル技術の専門家(※)の支援を受ける試行的な調達案件への参加を検討すること

※政府横断的なデジタル技術の専門家として、行政予算管理庁(Office of Managementand Budget)のU.S. Digital Service、連邦調達庁(General Services Administration、以下「GSA」という)の技術移転チーム、Column79「イノベーション促進に向けた公共調達(7)(米国)」で紹介したデジタル技術の専門家であるPresidential Innovation Fellowが挙げられています。

2016年大統領令では、新たな調達実務の試行や研修においてITを重視することが示されています。そのため、具体的なIT調達の案件において、デジタル技術の専門家から幅広い調達実務(ユーザー調査や調達計画、入札実務、契約後の取組等)に関わる支援を受け、それによる改善点等を他府省と共有し、政府全体に展開することを求めているのです。

4.各府省のAcquisition Innovation Advocateが集う会議へ参加すること

同会議は、政府横断的なデジタル技術の専門家との意見交換やIT以外の調達における課題や改善等を共有する場です。

5.GSAが運営する“Acquisition Gateway”(調達に関わる政府全体のオンライン上の情報共有の場)のInnovation Hallwayにおいて他府省と情報を共有すること

上記を整理すると、連邦政府全体におけるイノベーション調達を促進するための主要な取組は、第一に、各府省に推進チームを設置すること、第二に、具体的な案件で専門家の支援を受けながら調達改善を実践すること、第三に、様々な手段で各府省と情報共有すること、だと思います。

日本でも、Column126「イノベーション促進に向けた公共調達(13)(日本)」で紹介したように、イノベーション調達の促進を目指して、内閣府が本年4月にガイドライン「公共調達のイノベーション化及び中小・ベンチャー企業の活用の促進に係るガイドライン」を公表する等、イノベーティブな調達を推進する動きが見られます。

しかし、ガイドラインを公表するだけでなく、専門家の支援を受けつつ、具体的な案件でイノベーティブな調達を試行する等、更に一歩踏み込んだ取組へと進化させていくことが重要でしょう。

(出典)
Office of Management and Budgetウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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