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2019-06-19

Column132 (06/19):Procurement Innovation Lab(米国)

Column71「イノベーション促進に向けた公共調達(6)(米国)」では、米国連邦政府の中で最も調達金額の高い機関、国防総省(Department of Defense)のイノベーション促進に向けた取組を紹介しました。

Column79「イノベーション促進に向けた公共調達(7)(米国)」では、2012年から実施されている、イノベーション促進に向けたプログラム“Presidential Innovation Fellows program”を紹介しました。

今回は、国土安全保障省(Department of Homeland Security、以下「DHS」という)の“Procurement Innovation Lab”(以下「PIL」という)の取組を紹介します。

PILのミッションは、リスクを許容してイノベーティブな調達を行うカルチャーを醸成すること、とされています。

背景として、DHSの2015年度調査において、調達担当者の74%がイノベーティブな調達を実施する際の障害として組織文化等を挙げている、と報告されています。

そこで、DHSは、新しいアイデアを検証し、得られた成功・失敗いずれの教訓も共有して、好事例を生み出すため、バーチャルなコミュニティであるPILを創設したのです。

※2016年大統領令により、各省庁においても、PILのような調達におけるイノベーション促進の仕組(acquisition innovation lab)を設けることが求められています。

PILの職員は、調達担当者に対して、イノベーティブな調達を促進するため、選定された調達案件について様々なアドバイスを行います。

例えば、参入障壁となる条件の見直し等、契約締結までの期間に、2週間に1回程度の頻度(15分程度のチャット)で調達担当者と協議を重ねる、とのことです。

2015年度から2017年度の2カ年で、18案件が対象となり、10件のプロセス改善が実現した、と報告されています。

ただし、調達現場の文化を変えることは一朝一夕にはいかず、2017年度のPILの年次報告書でも、PILの取組による効果は初期段階で脆弱であると評価されています。

日本でも、Column126「イノベーション促進に向けた公共調達(13)(日本)」で紹介したように、イノベーション調達の促進を目指して、内閣府が本年4月にガイドライン「公共調達のイノベーション化及び中小・ベンチャー企業の活用の促進に係るガイドライン」を公表する等、イノベーティブな調達を推進する動きが見られます。

しかし、一般的にはリスク回避的な傾向があると言われている調達業務に従事する職員のカルチャーを変えることは、PILの取組を見ても、なかなか直ぐに成果を出すことは難しく、地道に長い目で取り組む必要があるのでしょう。

(出典)
Department of Homeland Securityウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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