Column127 (04/20):女性活躍推進に向けた公共調達の活用(6)(米国)
Column7「Woman Owned Small Business Program(米国)」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)において、特定のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、自動的にそれら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。
このプログラム・カテゴリーの1つである、Woman Owned Small Businessプログラムでは、要件を満たす女性が経営する中小企業(以下、「女性経営中小企業」という)及び女性が経営する経済的に不利な中小企業は、set-asideによる優先的な契約と、一定条件に基づく単独契約(sole selection)、つまり競争せず随意契約を締結することが可能です。
今回は、このWoman Owned Small Businessプログラムに関わる最新の検査レポート“WOMEN-OWNED SMALL BUSINESS PROGRAM: Actions Needed to Address Ongoing Oversight Issues”(2019)を簡単に紹介します。
はじめに、Woman Owned Small Businessプログラムの特徴の一つは、「幅広い産業で」女性経営中小企業の参加機会の平等を実現しようとしている点です。
幅広い産業で女性経営中小企業を増やすために、“相当程度”女性経営中小企業が少ない産業(92産業)と、“一定程度”女性経営中小企業が少ない産業(21産業)を特定し、92産業に該当する女性経営中小企業と、113産業(92産業と21産業の合計)に該当する経済的に不利な女性経営中小企業を発注において優遇しています。
そして、産業を特定するため、5年ごとに産業調査が行われています。連邦政府の元請契約データを活用し、産業コードごとの女性経営中小企業と非女性経営中小企業の受注割合を比較する等して、優遇措置を講じる産業を特定しています。
女性経営中小企業等の少ない特定の産業(モノ・サービス)を公共調達で優遇しているのです。
しかし、GAOが契約データや担当職員へのインタビュー等を基に、Woman Owned Small Businessプログラムの運用状況を検査した結果、set-asideが適用された契約のうち3.5%が優遇対象外のモノ・サービスに関わる契約であったと指摘しています。
Woman Owned Small Businessプログラムは、一定条件に基づく単独契約も可能な強力な優遇措置のため、対象外のモノ・サービスを優遇することは、プログラムの推進におけるリスクと捉えられています。
GAOは、SBAに対して、プログラム対象外のモノ・サービスとの契約有無を定期的に確認すること、確認した結果をプログラムに関わるトレーニング等で活用すること、という2つの勧告を行いSBAもこの勧告を受け入れています。
日本でも、Column6「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(1)」のとおり、女性活躍に向け、公共調達における優遇措置が行われています。
この取組は、各府省等が価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)を行う場合、女性活躍推進法に基づく認定企業(えるぼし認定企業)等を加点評価するものです。
米国連邦政府のように優遇対象とする産業(モノ・サービス)を特定して、set-asideや単独契約といった強力な優遇措置を講じる訳ではありません。
しかし、調達規模という意味では、2017年度に加点評価を実施した契約は、国で約9,300億円(約8,400件)、独立行政法人で約3,900億円(約4,800件)です。国と独立行政法人を合わせれば1兆円を超える規模です。
公正性が求められる公共調達において一定の条件を有する企業を優遇するのであれば、公共調達における優遇措置の戦略や効果、例えば、公共調達による優遇でどのような企業(女性活躍があまり進展していない産業分野、モノ・サービス等)を増やしたいのか?等の目的をより明確化し、戦略的な発注と事後検証を行うことは重要ではないでしょうか。
(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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