Column122 (03/10):英国NHSのSBRIに関わる実績(英国)
Column92「英国NHSのSBRI(英国)」では、英国NHSにおいて、イノベーションを促進・支援する主な制度である“Small Business Research Initiative”(以下、「SBRI」と略称)を紹介しました。
英国NHSは、NHSの医療ニーズに合致した技術のイノベーションを促進するため、2008年からSBRIを実施しています。
英国NHSのSBRIは、通常の研究開発資金の提供方法(一部助成やファンド機関とのマッチング等)と異なり、英国NHSが全額プログラム資金を調達し、企業に資金提供し、知的財産は開発者に帰属させる、という方法を採っています。
今回は、英国NHSのSBRIに関わる実績を簡単に紹介します。
1.契約件数:2013〜2018年の5年間におけるSBRIの契約件数は164件です。このうち市場で販売可能になった製品は60件、海外展開している企業は21社とのことです。
2.支援金額:2013〜2018年の5年間のSBRI支援金額は81百万ポンド(約120億円)。SBRI支援企業に対する他の補助金やベンチャーキャピタルからの追加支援は185百万ポンド(約270億円)とのことです。
3.競争性:SBIRは毎年いくつかのテーマを設定して参加者を募集しています。2017年には3つのテーマについて5件の競争が行われました。これら5件の競争の応募者は433社、採択企業22社とのことです。
上記の実績を見ると、単純に計算してSBRIに採択される倍率は約19倍です。
多数の応募者により競争性が確保され、一定程度の資金が長期に渡り投入されることが、NHSのコスト削減(2013〜2018年にかけて30百万ポンド超(約44億円)、製品化、海外展開に繋がっているのかもしれません。
また、英国NHSのSBRIは、英国中央政府が推進するSBRIの一部ですが、各地の医療ニーズに合致した実際的なイノベーションの創出を目指して、地域のネットワークを活用しています。
具体的には、地域ごとに、NHS、地方政府、学界、産業界、第三セクターのネットワーク“Academic Health Science Networks”(以下「AHSN」と略称)を設け、地域の医療ニーズに合致した実際的な技術提案を募集・競争し、資金提供を行い、各地のAHSNがイノベーションの評価等を行っています。
このような地域に根ざした具体的な医療ニーズに沿って取組が進められていることもNHSのコスト削減、製品化、海外展開に繋がっていると考えられます。
我が国においても医療ニーズに即したイノベーションの創出をどう実現していくか?、英国NHSのSBRIの取組は参考になるかもしれません。
(出典)
SBRI Healthcareウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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