Column112 (12/19):バイオ製品の調達促進に関わる事例(EU)
Column70「イノベーション調達に関する通達(EU)」やColumn77「イノベーション調達に関する指針(EU)」では、イノベーションの促進に向けて、公共調達を活用するEUの取組を紹介しました。
今回は、EUにおいて、バイオベースの製品・サービスの調達を促進する取組を紹介します。
EUでは、2020年に向けた成長戦略「Europe2020」に基づいて、Horizon 2020というプログラムが実施されています。
Horizon 2020は、2014年から2020年までの間、約800億ユーロの資金提供が行われるEU最大規模の研究及び革新的開発促進プログラムです。
Horizon 2020のプログラムの1つに、InnProBio(the Forum for Bio-Based Innovation in Public Procurement)があります。
InnProBioは、2015年3月から2018年3月までの3年間のプロジェクトで、公的機関におけるイノベーティブなバイオベース製品・サービスの調達を促すプログラムです。
プログラムの成果として、バイオベース製品・サービスの調達を促すためのガイダンス等、様々なツールが提供されています。
ここでは、オランダ社会基盤・環境省(Ministry for Infrastructure and Environment)の自動販売機の設置・管理業務において、バイオベース製品の使用を促進した事例を紹介します。
・オランダ社会基盤・環境省は、バイオベース製品の使用促進のため、ハーグにある合同庁舎の自動販売機の設置・管理業務(ホットドリンク及びカップの提供を含む)において、バイオベース素材のカップを使用することにした。
・具体的には、価格(6割)と質(4割)を評価する入札(most economically advantageous tender)の質の評価において、品質管理システム(40%)、障害対応・モニタリング・請求プロセス(40%)、バイオベースのカップとイノベーション(20%)が評価された。
・応札する事業者は、バイオベースのカップとイノベーション(20%)の項目について、a)バイオベースカップの素材、b)カップの再利用・廃棄方法、c)契約期間(7年間)にわたる技術革新への対応、について提案することが求められた。
・評価の結果、契約相手方となった事業者のカップは、再利用等が難しい石油系樹脂でコーティングしたカップから、植物由来の原料でコーティングしたバイオベースのカップとなった。
上記は結果的に、バイオベースの製品・サービスの調達が促進された興味深い事例です。ただ、重要な点として指摘されていたことは、①調達前に事業者との十分なコミュニケーションが図られたこと(事業者へのカップ価格や提供可能性の確認)、②政府内外の知見を結集した十分な検討が行われたこと(調達の専門家としての調達支援機関(PIANOo)、持続可能性等を専門とするEnterprise Agency of the Netherlands、技術の専門家としてのワーゲニンゲン大学がチームを組成して調達を計画)です。
イノベーション調達においては、特に、このような調達前の入念な準備が肝要と言えるでしょう。
一方で、調達前の準備も調達コストですので、このコストを回収する意味でも、契約期間は7年間と長期に渡っているのではないでしょうか。
(出典)
EUウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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