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2018-09-28

Column103 (9/28):HUBZone Programに関する検査事例(3)(米国)

Column5「HUBZone Program (米国)」で紹介したとおり、HUBZoneとは、歴史的低開発地域(historically Underutilized Business Zone)の略称で、HUBZone地域に所在し、一定の条件を満たす中小企業(以下、「HUBZone企業」という)は、米国連邦政府の3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)で優遇を受けることができます。

具体的には、set-aside(中小企業向けの留保)、単独契約(sole selection)の適用、公開競争(full and open contract competition)の価格評価(元請・下請の両方)における10%の優遇(競争相手が明らかに中小企業である場合を除く)です。

なお、HUBZone企業は、企業要件や地域要件(※)を基に、定期的に認定が見直されます。

※失業率や貧困率等の統計データを基にHUBZone地域を決定。

今回は、HUBZoneプログラムの運用について検査した米国会計検査院(Government Accountability Office、以下「GAO」という)のレポート、“SMALL BUSINESS CONTRACTING:Small Business Administration Could Further Strengthen HUBZone Eligibility Reviews in Puerto Rico and Programwide”(2018)を紹介します。

同レポートでは、以下の点を明らかにしています。

・HUBZone企業の認定条件に合致せず、本来は認定を受けられない企業が、HUBZone企業として認定されている場合がある。

・この状況を改善するため、HUBZoneプログラムを担当する米国中小企業庁(Small BUsiness Administration、以下「SBA」という)は、認定時に企業が提出する書類を増やして、認定の適切性を担保できるようにしていた。

・また、HUBZone企業として優遇を受けた企業のうち、契約金額が1百万ドル超の企業は、認定更新時に追加資料を提出することとして、認定更新プロセスも厳格化していた。

・ただし、GAOがSBAに「認定更新時の追加資料を求める企業は、なぜ契約金額1百万ドル超の企業だけで良いのか?どのような分析がなされたのか?」などいくつかの点について対応を求めたものの、明確な説明はなされなかった。

・そのため、GAOは、ランダムに抽出したHUBZone企業(12社)の提出書類を確認し、SBAや企業等にインタビューも実施したところ、12社のうち9社に書類の不足があり、現場職員の手続きが適正に行われているかを内部で監査するためのマニュアル等もきちんと整備されていなかった。

このように、米国連邦政府では、複雑な地域要件や企業要件を設定して、支援対象となる中小企業を絞り込み、期間を限定して手厚い優遇措置を講じています。

ただし、複雑な要件を設定するが故に、認定の適切性を担保しにくいという側面も出てきているようです。

一方、日本でも、中小企業の受注機会の促進等、公共調達における優遇施策が行われています。

ただし、HUBZoneプログラムのように、最新の統計データを基に、中小企業の中から支援対象企業を絞り込み、手厚い優遇措置を行うといったことはされていません。

日本では、地域要件を設定せず、幅広い中小企業を多少優遇する(入札参加資格の緩和等)という、広く・薄い優遇施策が行われていると思います。米国連邦政府の取組とは異なるアプローチが取られていると言えるでしょう。

諸外国の取組や課題を参考に、改めて、日本ではどのようなアプローチや手続きが適しているか?、検討することも有効ではないでしょうか。

(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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