Column97 (6/19):入札手続きの簡素化(EU)
今回は、EUにおける入札手続き簡素化の取組として、European Single Procurement Document(以下、ESPD)を紹介します。
ESPDは、EU加盟各国が、EU指令で定められている閾値以上の調達について、共通して使用する入札書類です。
2014年に改正された公共調達指令に基づき、2016年から導入されています。
EU加盟各国の入札へ参加を希望する企業は、各社の状況を踏まえ、ESPDのチェック項目(住所等の基礎情報を含む)ごとにチェックや必要事項を入力します。
入札段階では、各項目の証拠書類を添付する必要はなく、あくまで自己証明書類としてESPDを提出することになります(オンラインで各項目に回答し、ファイルを出力することも可能になっています)。
そして、ESPDとその他の入札書類を発注者へ提出し、落札者のみESPDの根拠となる様々な書類の提出が求められるのです。
ESPDが導入される以前、入札への参加を希望する企業、特にEU域内の様々な国の入札へ参加を希望する企業は、加盟各国で書式が異なること、また、様々な書類(納税証明書等)の提出を入札参加段階で求められること等が、かなりの事務負担となっていたと言います。
特に中小企業やスタートアップ企業にとり、こうした事務負担は入札参加の障壁となる可能性があるでしょう。
ESPD導入後、EU加盟各国で書式が統一され、また、入札参加段階では自己証明のみで、落札者のみ根拠書類の提出が求められるようになり、発注者・参加者双方の事務手続きの簡素化が実現したと、説明されています。
さらに、最近では、発注者・参加者双方のさらなる負担軽減に向け、ESPDと国のデータベース等の接続を可能にする取組も見られます。
例えばフィンランドでは、電子調達システムにESPDが内蔵されるとともに、電子調達システムは国の8つのデータベースと接続可能になっています。入札へ参加を希望する企業が登録すると、ESPDに必要なデータがデータベースから検索され、参加要件を充足しているかが自動的に確認される、とのことです。
日本では、外局や地方支分部局を含む国の入札の参加資格として全省庁統一資格が設けられています。
しかし、地方公共団体を含む参加資格の統一ではありません。また、入札書や委任状等の書類形式は省庁ごとに細かい点で異なり、電子調達システムとその他のデータベースとの接続等の取組も進められていません。
公的機関は、民間企業の調達と異なり、透明性・公正性等の観点から、参加企業に各種書類の提出を求める一定の必要性はあると思いますが、EUのように入札手続きの簡素化に向けた、さらなる取組推進は極めて重要でしょう。
(出典)
EUウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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