Column96 (5/29):イノベーション促進に向けた公共調達(9)(日本)
Column52「イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(1)」、Column53「イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(2)」では、カナダにおける付帯的政策、具体的には、イノベーションを促進するための公共調達の取組「Build in Canada Innovation Program」のプロセスと同プログラムのポイントを紹介しました。
このプログラムは、連邦政府が、市場で販売されていない製品やサービスの革新性を評価し、革新性が評価されたものについては、それを調達し、製品・サービスを利用した結果を企業等(NPO、大学等も含む)へフィードバックするというものです。
Column66「政府の調達ニーズの開示(カナダ)」では、政府の革新的な製品・サービスに対する調達ニーズを“Departmental innovation challenges”というウェブサイトで公表していることを紹介しました。
このような、政府の調達ニーズについて民間等から提案を募る取組は、日本でも行われているのでしょうか?
同様の取組として、内閣府オープンイノベーションチャレンジ(中小・ベンチャー企業による公共調達の活用推進プログラム)が挙げられるでしょう。
同プログラムは、国の機関の調達ニーズを示し、中小・ベンチャー企業から提案を受け付け、事業化していくための公募事業です。
内閣府オープンイノベーションチャレンジ2017では、警察庁、消防庁、海上保安庁の調達ニーズ(以下の9件)について提案が受け付けられ、技術審査委員会による審査の結果、15社の提案が採択されました。
・遠方の水難要救助者に対し正確かつ安価に救助資材を搬送する手法
・火災現場等において無線機器等の音声を支障なく聞き取る手法
・濡れた火山灰等での捜索等の活動時間を短縮する手法
・車両を強制的かつ安全に停止させる手法
・雑踏において一般市民に混在する不審者を発見・検知する手法
・個人が徒歩で警備・救助等を行う際、放射線を可視化する手法
・係船・曳航作業における作業員の負担軽減・作業時間の短縮に資する手法
・海洋を航行する船舶のメンテナンス作業を軽減させる手法
・海上において周囲に対し昼夜問わず明確に情報伝達等する手法
採択企業は、内閣府が認定したアドバイザーからの助言を受けつつ、提案の実現可能性調査を行い、ピッチイベントで事業会社等とのマッチングに挑むことになる、とのことです。
カナダのように、公的機関が実際に調達し、結果をフィードバックする訳ではないため、そもそも政府の調達ニーズを基に実施した実現可能性調査の結果が、民間マーケットで高く評価されるのか?という疑問はありますが、どのような展開になるのか、注目に値するのではないでしょうか。
(出典)
内閣府ウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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