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2018-04-05

Column91 (4/5):HUBZone Programの実績(米国)

Column5「HUBZone Program (米国)」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)において、特定のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、それら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。

このプログラム・カテゴリーの1つである、HUBZoneプログラムでは、HUBZone契約の資格を有する中小企業(以下、「HUBZone企業」という)に対するset-aside(HUBZone企業間での競争を経て契約を締結)や単独契約(sole selection)の適用、公開競争(full and open contract competition)の価格評価(元請・下請の両方)における10%の優遇(競争相手が明らかに中小企業である場合を除く)が行われます。

Column37「HUBZone Programに関する検査事例(1)(米国)」で紹介したとおり、HUBZoneとは、歴史的低開発地域(historically Underutilized Business Zone)の略称で、HUBZoneプログラムの対象となる指定地域は、失業率や貧困率等の統計データを基に決定されます。

2018年1月26日時点で、HUBZone企業の数は6,026社、2017年度の契約件数は80,602件、契約金額は75.3億ドル(約8,054億円)、と報告されています。

75.3億ドルの内訳は以下のとおりです。

・19.0億ドル:HUBZone企業に対する優遇により、HUBZone企業が契約を締結(14.9億ドルのset-aside、65.3百万ドルの単独契約、342.5百万ドルの競争上の優遇)

・15.3億ドル:HUBZone企業が、通常の競争の結果、契約を締結

・41.0億ドル:HUBZone企業が、他の優遇施策(women-owned等)により契約を締結

また、HUBZoneプログラムの運営コスト(プログラム担当者の人件費等)は、8.4百万ドルかかっていると計算されています。

HUBZone企業は、確かに競争において優遇されますが、上記のとおり、単独契約(競争を経ない契約)はHUBZone企業の優遇による契約総額(19.0億円)の一部(65.3百万ドル)です。

HUBZone企業は、優遇されつつも、他社との競争の結果、契約締結に至ることが多いと考えられます。

公共調達において一定の政策目的を達成するために何らかの優遇を行うことは、ある意味、新たな予算措置を必要とせずに、政策目的を達成する手段が増えることを意味しています。

財政状況が厳しい中、今後、益々こうした取組(付帯的政策)が推進されることが考えられますが、付帯政策においても、いかに競争性を確保するかという点は、重要なポイントでしょう。

(参考資料)
Congressional Research Serviceウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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