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2017-12-08

Column76 (12/08):国防総省における情報システム等の調達(米国)

Column71「イノベーション促進に向けた公共調達(6)(米国)」では、米国連邦政府の中で最も調達金額の高い機関、国防総省(Department of Defense、以下「DOD」という)のイノベーション促進に向けた取組を紹介しました。

今回は、DODの情報システム等の調達について検査した会計検査院(Government Accountability Office、以下「GAO」という)のレポート“DOD’s Use of Lowest Price Technically Acceptable Source Selection Procedures to Acquire Selected Services”(2017)を紹介します。

はじめに、2017年度国防授権法(National Defense Authorization Act)は、DODに対して、サイバーセキュリティ等の情報システム関連調達や防弾チョッキ等の保護装置、知識習得研修や臨時のロジスティクスサービス、米国外のその他業務等の調達を行う際に、最低金額での調達手続き(lowest price technically acceptable、以下「LPTA」という)を可能な限り採用しないよう求めています。

具体的には、LPTAを採用する際の要件を限定して(仕様以上の提案により得られる価値が無い/殆ど無い等)、可能な限り過去の実績や技術内容等を評価する調達手続きを採用するよう求めているのです。

また、同法は、GAOに対して、DODの10百万ドル以上の契約におけるLPTAの採用状況を検査することも求めています。

今回のレポートは、この2017年度国防授権法に基づき、GAOがDODにおけるLPTAの採用状況を検査したものです。

GAOは、連邦政府の調達データベース(Federal Procurement Data System-Next Generation)を活用して、DODが2016年10月~2017年3月末迄の6ヶ月間で締結した10百万ドル以上の契約(781件)のうち、2017年度国防授権法で規定している情報システム等の調達に該当する133件を抽出し、このうち、LPTAによる調達で入札書類等の入手が可能な7件を詳細な検査対象としています。

詳細な検査対象となった7件の案件について、GAOは、DODの発注者へのインタビューや入札書類の内容等を精査し、以下の点を明らかにしています。

・2017年度国防授権法の内容を踏まえ、現在、DODの規則(Defense Federal Acquisition Regulation Supplement)は改定中であるものの、実態としては、LPTAを採用している7件の案件は、2017年度国防授権法が示す要件のいずれかに合致していた(勧告は無し)。

上記のとおり、2017年度国防授権法に基づき、10百万ドル以上の情報システム等の調達には、原則、LPTAを採用しないこととなっています。

ただし、過去の実績や技術内容等を評価する手続きの採用には、適切な評価項目を検討する時間や提案のコスト以外の要素を評価する時間等、追加的なコストが発生します。

調達する内容に応じて、どのような手法が適切か(最低金額での調達か、その他要素を評価した調達か等)発注者が検討し決定すること、また、その決定根拠を事後的に検証したり、次回の調達における参考とするため、決定根拠を共有できるような簡単な仕組みを構築することは重要かもしれません。

(出典)
Government Accountability Officeウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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