Column73 (11/16):英国国防省における非競争的な契約(2)(英国)
Column38「英国国防省における競争性の無い契約(英国)」では、英国会計検査院(National Audit Office、以下「NAO」という)の検査のうち、英国国防省(Ministry of Defence、以下、「MOD」という)の競争性の無い契約に係る2001年の検査事例(Non-competitive procurement in the Ministry of Defence)を紹介しました。
このMODの競争性の無い契約については、2011年、第三者レビュー“Review of single source pricing regulations”の中で、競争性の無い契約のコストや利益をレビューするために導入された1960年代の仕組み(Yellow Book regime)は、既に機能していない点が指摘され、このような指摘等を受けて、サプライヤーのコストに関わる透明性を向上すること等を目的として、2014年Defence Reform Act及び2014年Single Source Contract Regulationsにより、防衛調達における競争性の無い契約に関わる新たな規制枠組みが設けられました。
例えば、MODの政策遂行型政府外公共機関(executive non-departmental public body)として、Single Source Regulations Office(以下、「SSRO」という)が設置されています。
SSROは、MOD及びサプライヤーからコスト等の情報を収集し、競争性の無い契約に関わる指針を作成したり、個々の契約における法令遵守状況等を評価する役割等を担っています。
また、2014年Single Source Contract Regulationsは、契約における利益率を決定するためのステップ(ベースとなる利益率の決定(2015年3月31日迄の契約は10.70%等)、ベースライン利益率のリスク調整等)等、様々な点を規定しています。
もちろん、2014年Single Source Contract Regulationsは、MODの非競争的な契約全てに適用される訳ではなく、5百万ポンド以上の大部分の契約及びいくつかのカテゴリーの下請契約にのみ適用されます。
防衛調達の基本が競争によるValue for Moneyの実現である点は変わっていませんが、競争性の確保が難しい契約(特殊な装備品や、セキュリティの関係上、特定の者からの調達が必要な装備品等の契約)については、特別な仕組み・組織を法令で規定し、Value for Moneyの実現を図ろうとする等、取組を工夫している点は、注目に値するのではないでしょうか。
日本においても英国と同様に、防衛調達は、政府の調達の大きな部分を占めており、一定程度、競争性の無い契約が結ばれています。
これらの適切な取扱やモニタリングは、引き続き検討を深める必要があるでしょう。
(参考資料)
Single Source Regulations Officeウェブサイト
National Audit Officeウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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