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2017-11-07

Column71 (11/07):イノベーション促進に向けた公共調達(6)(米国)

Column62「イノベーション促進に向けた公共調達(5)(米国)」では、連邦政府におけるイノベーション促進に向けた主な取組としてSBIR/STTRを紹介しました。

今回は、米国連邦政府の中で最も調達金額の高い機関、国防総省(Department of Defense、以下、「DOD」という)のイノベーション促進に向けた取組を紹介します。(なお、日本の中央省庁の中でも最も調達金額の高い機関は防衛省です)

DODのイノベーション促進に向けたプログラムは以下のとおりです。

1.SBIR/STTR
・連邦政府研究開発費により、技術力を有する中小企業の研究開発・商用化を促進するためのプログラム(詳しくは、Column62「イノベーション促進に向けた公共調達(5)(米国)」

2.Indian Incentive Program
・先住民が経営する企業(要件として先住民による株式の過半数取得等)を下請け先として採用することを促進するためのプログラム

3.Mentor-Protégé Program
・一定の要件を満たすメンター企業と中小企業の両方を募集し、要件を満たしたメンター企業が、支援対象となる中小企業に、会計やマーケティング等の経営面の支援、投資や貸付等の財務面での支援、共同体での応札等の調達面での支援等、各種経営支援を行うプログラム。
・メンター企業と支援を受ける中小企業は、事前に支援の目標及び目標に向けての計画やタイムライン等に合意(Mentor-Protégé Agreements)し、メンター企業の再委託先又は官公庁等の元請け事業者としての能力向上等を目指す(Mentor-Protégé Programの運用に関わる会計検査はColumn47「Mentor-Protégé Programに関する検査事例(米国)」で紹介)

上記のプログラムは、連邦政府の複数機関で取り組まれているものですが、以下はDOD独自の取組です。

4.Rapid Innovation Fund
・2011年度国防授権法(National Defense Authorization Act)により設置された基金。中小企業の革新的な技術を防衛調達で活用することを目的とするプログラム(2016年度国防授権法で2023年9月30日までの設置が決定)。
・プログラム対象先は企画競争により選定され、2011年度~2015年度までの第一次選考応募数は13,040件、このうち第二次選考の対象となったものは957件、最終的な支援数は553件で、うち88%が中小企業。
・基金による支援期間は2年以内、個々の支援金額の上限は300万ドル(平均的な額は210万ドル)。2011年度~2015年度までの支援総額は1億4,000万ドル。

なお、Rapid Innovation Fundの2011年度~2015年度の支援企業のうち、56%がSBIRプログラムの参加企業であった、と報告されています。

公共調達で中小企業のイノベーションを活用していくためには、厳しい競争による提案のブラッシュアップと、期間を区切って段階的に手厚い支援を行い、最終的にきちんとした評価を行うこと(Rapid Innovation Fund参加企業の新規雇用の増加、売上の増加、技術移転の実現性等が評価対象)、このいずれも必要なプロセスであるということを示唆しているような気がします。

(出典)
Department of Defenseウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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