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2017-09-21

Column65 (09/21):公共調達による中小企業の成長(英国)

Column28「公共調達における付帯的政策(2)(G-cloud)(英国)」で紹介したとおり、英国では、英国内閣府が所管するエージェンシー(executive agency)の一つ、Crown Commercial Service(以下、CCSという)が、政府との契約を締結した中小企業の事例を紹介しています。

CCSが紹介する事例は、「政府との契約を締結したことで、中小企業がどのような発展を遂げたのか?」という視点で整理されています。

Column32「中小企業の受注機会増大に関わる取組(1)(英国)」では馬の飼料の供給契約を締結しているFox Feeds社の事例、Column33「中小企業の受注機会増大に関わる取組(2)(英国)」では不動産に関するアドバイザリー業務契約を締結しているMontagu Evans社の事例、Column41「中小企業の受注機会増大に関わる取組(3)(英国)」では様々なキャンペーン業務契約を締結しているKindred社の事例を取り上げました。

今回は、ADi Access社の事例を取り上げます。

ADi Access社は、視覚障がいを持つ人が尊厳を保持しつつ自立して暮らせるような製品を研究開発する会社です。

同社は、視覚障がいを持つ人が公衆トイレを利用しやくなるよう、ROOM MATEという商品を開発しました。

具体的には、障がいを持つ人等が利用する多機能トイレの動線や付属品の場所、使い方のガイドを録音した装置(ROOM MATE)をトイレ内に設置することで、既設のトイレが利用しやすくなる、というものです。

国会議員の協力を得て、下院Diversity and Inclusionのトップと会い、商品の価値や有効性等を説明した結果、下院との契約が実現し、この契約実績が信用力となり、その他機関との契約につながり、売上が3倍に増加した、と報告しています。

社長のHelen Holyerは、「政府機関がクライアントであるということが、潜在的なクライアントに対する信用力の向上につながった」と説明しています。

以前紹介した事例のFox Feeds社、Montagu Evans社、Kindred社の事例と同様に、今回も、官公庁との契約の効果として、「信用力の向上」といった定性的な効果が示されていますが、これに加えて、Kindred社の「官公庁との契約締結後の雇用増加数」と同様に、「売上高」といった定量的な効果も把握・評価されている点は、ポイントと言えるでしょう。

日本でも、Column2「公共調達に関する制度」で紹介したとおり、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)」(昭和41年法律第97号)があり、官公需法は、中小企業者の受注の機会を確保するための措置を講ずることにより、中小企業者が供給する物件等に対する需要の増進を図り、もって中小企業の発展に資することを目的としています。

これらの目的が達成されているか検証するため、現在は、国等の行政機関と中小企業との間の契約金額や、調達金額全体に占める中小企業との契約金額の割合等が評価対象となっていますが、「公的機関との契約が中小企業の発展に貢献したのか?」という視点を持ち、(事例を積み上げる形でも)定量的・定性的に分析していくことは重要ではないでしょうか。

(出典)
Crown Commercial Serviceウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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