Column62 (08/27):イノベーション促進に向けた公共調達(5)(米国)
Column52「イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(1)」、Column53「イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(2)」、Column54「イノベーション促進に向けた公共調達(3)(オランダ)」、Column56「イノベーション促進に向けた公共調達(4)(EU)」では、イノベーションの促進に向けて公共調達を活用する、カナダ、オランダ、EUの取組を紹介しました。
今回は、米国連邦政府の取組を紹介します。
米国連邦政府において、中小企業のイノベーションを促進・支援する主な制度は、Small Business Innovation Research(以下、「SBIR」と略称)と、Small Business Technology Transfer(以下、「STTR」と略称)です。
SBIR、STTRは共に、連邦政府研究開発費により、技術力を有する中小企業の研究開発・商用化を促進するためのプログラムです。
ただし、STTRは、中小企業が研究初期段階で他の研究機関と正式に共同研究する場合にのみ利用可能なプログラムで、SBIRとはいくつかの点で異なります。
以下は両プログラムの主な内容です。
<対象企業の選定プロセス>
SBIR、STTR共に3段階の競争的なプロセスが用意されています。ただし、第一段階だけ、期間に関する要件が異なります。
・第一段階は、中小企業が技術的なメリットや商業化の可能性を検証する段階です。通常、SBIRは6ヶ月以内で15万ドル以内、STTRは、1年以内で15万ドル以内の研究開発資金が提供されます。
・第二段階は、第一段階の結果を基に、引き続き、中小企業が技術的なメリットや商業化の可能性を検証する段階です。通常、SBIR、STTR共に2年以内で100万ドル以内の研究開発資金が提供されます。
・第三段階は、第一段階、第二段階の結果を基に、研究開発の商業化を目的とする段階です。第三段階ではSBIR、STTR共に追加資金は無く、公共機関における研究成果の購入(公共調達の活用)や他の研究開発資金の取得が想定されています。
<プログラム参加機関>
・SBIRでは、毎年の研究開発予算が1億ドルを超える機関が、自身の研究開発予算の3.2%(2017年度)をSBIRに割り当てるよう義務付けられており、現在、SBIRに参加している機関は11機関です。
・STTRでは、毎年の研究開発費が10億ドル以上の機関が、自身の研究開発費の0.3%をSTTRに割り当てるよう義務付けられており、現在、STTRに参加している機関は5機関です。
SBIR、STTR共に、研究開発の初期段階では、競争的なプロセスを経て一定の研究開発資金が提供されますが、商業化の段階では追加資金の提供は無く、公共調達等が活用されています。
米国連邦政府における、研究開発助成から公共調達の活用までの切れ目の無いイノベーション促進施策が成果を上げているのか、中小企業庁等が行ったインパクト評価については、別のコラムで紹介したいと思います。
(出典)
Small Business Administrationウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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