Column59 (08/08):人的役務契約に関わる検査事例(米国)
Column47「Mentor-Protégé Programに関する検査事例(米国)」では、Mentor-Protégé Programの運用について検査した米国会計検査院(Government Accountability Office、以下「GAO」という)のレポート、“DOD Should Take Actions to Ensure That Its Pilot Mentor-Protégé Program Enhances the Capabilities of Protégé Firms”(2017)を紹介しました。
今回は、連邦政府の契約に関わるGAOの最新の検査事例“Improvements Needed in How Some Agencies Report Personal Services Contracts”(2017)を紹介します。
GAOのレポートでは、連邦政府が2011年度~2015年度の間、15億ドルの人的役務契約(personal services contract)を締結していること(※)等を踏まえ、人的役務契約の大部分を占める4機関(空軍、陸軍、海軍、国際開発庁)について、以下の2点等を検査しています。
※連邦政府の10万ドル未満の少額契約を除く契約情報が蓄積されたシステム(Federal Procurement Data System-Next Generation、以下、「FPDS-NG」という)を基に算定
1)4機関は、どの位、人的役務契約を締結しているか?
2)4機関は、人的役務契約で雇用した職員にどのような仕事を割り当てているか?
それぞれの検査結果を簡単にまとめると以下のとおりです。
1)国際開発庁は、FPDS-NGによると、2015年度、123百万ドルの人的役務契約を締結していた。一方、空軍、陸軍、海軍については、FPDS-NGの契約情報の一部について、不正確な契約情報が掲載されていたり、人的役務契約ではないと分類されていた契約が実際には人的役務契約であったりする等の誤りがあり、金額の確認が出来なかった。
2)DODで人的役務契約により雇用された職員は、主に医療サービスに従事していた。一方、国際開発庁については、プログラムマネジメントやセキュリティ分析等、幅広い業務が割り当てられており、一部業務は連邦政府が委託を禁止している政府固有の業務と考えられるものも含まれていた。
この結果を基に、GAOはDODと国際開発庁に対して、以下の2点を勧告し、両機関はこの勧告を受け入れています。
1)DODは、空軍、陸軍、海軍に対して、FPDS-NGの契約情報を正しく掲載するよう指示すること
2)国際開発庁は、人的役務契約の一部について定期的なレビューを実施すること
上記のレポートで注目したい点は、政府内の人的マネジメントの根幹となる人的役務契約の量と内容が正しく把握されるよう促されているという点です。
我が国でも、国家公務員の定員が減少するなか(平成29年度は5,602人減)、多くの派遣契約等が結ばれています。
政府内の人的マネジメントの根幹となる人的役務契約が政府全体としてどの程度、また、どのような内容で締結され、実態として、契約に見合った業務内容となるよう適切にマネジメントがされているか、継続的かつ容易に確認するためには、政府全体の人的役務契約の情報を整理・分析できるようにすることも必要ではないでしょうか。
(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト
内閣官房ウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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