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2017-07-17

Column57 (07/17):HUBZone Programに関する検査事例(2)(米国)

Column5「HUBZone Program (米国)」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)において、特定のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、自動的にそれら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。

このプログラム・カテゴリーの1つである、HUBZoneプログラムでは、HUBZone契約の資格を有する中小企業(以下、「HUBZone企業」という)に対するset-asideや単独契約(sole selection)の適用、公開競争(full and open contract competition)の価格評価(元請・下請の両方)における10%の優遇(競争相手が明らかに中小企業である場合を除く)が行われます。

2015年度の連邦政府とHUBZone企業の契約額は、約66億ドルです。

※HUBZoneとは、歴史的低開発地域(historically Underutilized Business Zone)の略称で、HUBZoneプログラムの対象となる指定地域は、失業率や貧困率等の統計データを基に決定されます。そのため、経済状況等の変化で、定期的に対象地域が見直されるのです。

Column37「HUBZone Programに関する検査事例(1)(米国)」では、HUBZoneプログラムの指定地域、認定企業の見直しが適切に行われているか?、という観点から検査した、米国会計検査院(Government Accountability Office、以下「GAO」という)のレポートを紹介しました。

今回は、GAOによるHUBZoneプログラムに対する勧告と、勧告に対するHOBZoneプログラムの所管庁である中小企業庁(Small Business Administration、以下「SBA」という)の対応を概観した議会証言、“HUBZONE PROGRAM Oversight Has Improved but Some Weaknesses Remain”(2017)を紹介します。

同議会証言では、HUBZoneプログラムに対する11件の勧告(2008年~2016年)について、SBAは7件の勧告に対応しているものの、2件は未対応で、残りの2件は対応中と説明しています。

GAOの勧告とSBAの対応の例は以下のとおりです。

・認定等に係る不正への勧告とSBAの対応
2008年と2009年、GAOは、5つの大都市圏に所在するHUBZone企業29社が認定要件を満たさないことを確認しました。そこで、GAOは29社以外にも不適切な認定が起こり得ることを勧告し、これに対してSBAは認定企業の提出書類を増やす対策を講じました。しかし、2010年、GAOは依然としてHUBZone企業の認定が、架空の住所でも可能であることを確認し、これに対してSBAは、2010年度から認定企業の10%の訪問を開始しています。

・再認定のプロセスへの勧告とSBAの対応
HUBZone企業が継続して認定を受けたい場合は3年毎に再認定の手続きが必要となります。2015年、GAOは、SBAが再認定を希望する企業が要件を満たしているかを確認するための書類提出を求めていないことを確認しました(企業の自己申告で再認定が可能な状況)。そこで、GAOはSBAの再認定プロセスを見直し、再認定に対する管理を強化するよう勧告しました。2017年2月時点で、SBAはこの勧告に対して未対応とのことです。

上記の議会証言で注目したい点は、HUBZoneプログラムの認定・再認定のプロセス等について、継続的に会計検査が行われている、という点です。

日本でも、中小企業の受注機会の促進等、公共調達における優遇施策が行われていますが、会計検査院による検査や各府省庁での内部監査は行われていないように思います。

日本では、幅広い中小企業の受注機会を促進する、薄く・広い施策が実施されているため(米国連邦政府のような、比較的、手厚い優遇措置は行われていないため)、会計検査院による検査や各府省庁での内部監査は行われていないのかもしれません。

ただ、Column5「HUBZone Program (米国)」でも言及したとおり、近年、公共調達を活用した取組が積極的に推進される一方で、特定の政策目的を達成するためには、税制優遇等、公共調達以外の様々な政策手段が考えられるなか、公共調達を活用することの有効性を検討することは重要だと思います。

(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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