Column53 (06/21):イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(2)
Column52「イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(1)」では、カナダにおける付帯的政策、具体的には、イノベーションを促進するための公共調達の取組「Build in Canada Innovation Program」を紹介しました。
このプログラムは、連邦政府が、市場で販売されていない製品やサービスの革新性を評価し、革新性が評価されたものについては、それを調達し、製品・サービスを利用した結果を企業等(NPO、大学等も含む)へフィードバックするというものです。
ポイントとなるのは、以下の2点でははないでしょうか。
(1)政府機関が、市場で販売されていない製品やサービス等を評価できるのか?
(2)市場で販売されていない製品やサービスを調達する機関を、政府内で見つけられるのか?
(1)については、National Research CouncilやPublic Services and Procurement Canada、その他機関に所属する専門家から構成されるチームが、製品やサービスのテーマごとに、最新のトレンドや技術等を分析し、評価している、とのことです。
Build in Canada Innovation Programを所管している公共事業・調達省(Public Services and Procurement Canada)や技術に関心を持つ各府省等が、製品やサービスの革新性を評価するのではなく、政府内の専門家を結集し、最新のトレンド等を踏まえて評価する体制を構築している点は重要でしょう。
また、(2)については、公共事業・調達省が、政府内のtesting partnerを探し、testing partnerが当該製品・サービスを利用します。
その際、製品・サービスを調達するための費用は、testing partnerではなく、Build in Canada Innovation Programの予算から支出されるのです(非軍用製品・サービスは上限50万加ドル、軍用製品・サービスは上限100万ドル)。
また、Public Services and Procurement Canadaが、Build in Canada Innovation Programの予算でカバーされていない製品等の輸送費やサプライヤーの旅費等を負担し、契約手続き等のマネジメントも行います。
つまり、testing partnerとなる機関は、直接コストを掛けずに、最新の技術を試すことができるのです。
さらには、革新性が評価された技術の一覧(現在は196件)が、技術分野や企業名、ステイタス(testing partnerの募集中/決定/契約済等)とともに公表され、関心のある機関は担当者に問い合わせすることが可能になっています。
技術の評価と、testing partnerとのマッチング、どちらも難しい点だと思いますが、これを可能にするような工夫がなされていると言えるでしょう。
(出典)
Public Services and Procurement Canadaウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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