Column52 (06/14):イノベーション促進に向けた公共調達(カナダ)(1)
これまでのコラムでは、日本、米国連邦政府、英国中央政府、EU加盟国における公共調達を活用した取組(いわゆる付帯的政策)等を紹介してきました。
今回は、カナダにおける付帯的政策、具体的には、イノベーションを促進するための公共調達の取組を紹介します。
カナダでは、イノベーションを促進するための公共調達の取組として、「Build in Canada Innovation Program」というプログラムがあります。
このプログラムは、連邦政府が、市場で販売されていない革新的な製品やサービスを調達し、その結果を企業等(NPO、大学等も含む)へフィードバックするというものです。
2年間の試行を経て、2012年から継続的に取り組まれており、公共事業・調達省(Public Services and Procurement Canada)が同プログラムを所管しています。
プログラムの主なプロセスは以下のとおりです。
〇Build in Canada Innovation Programの主なプロセス
・市場で販売されていない製品やサービスを開発した企業等が、プログラムのウェブサイトに自社製品・サービス等の情報を登録する。
・National Research Councilが、ウェブサイトに登録された製品・サービスの革新性等を評価する。
・革新性等が認められた場合、公共事業・調達省が政府内のtesting partnerを探す。
・testing partnerが見つかった場合、当該製品・サービスを調達する(非軍用製品・サービスは上限50万加ドル、軍用製品・サービスは上限100万ドル)。
これにより、企業等は製品・サービスを初めて販売することが可能になるとともに、実際に製品・サービスを使用した結果を、政府からフィードバックしてもらうことができるのです。
また、政府も、最新の製品・サービスを使用することが可能になるとともに、課題解決や効率性の向上につながる可能性がある、とのことです。
2010年からの2年間の試行期間を含めた、現在(2016年10月報告時点)までの実績は以下のとおりです。
〇Build in Canada Innovation Programの実績
・契約実績:205件
・契約金額:7,200万加ドル(約60億円)
・契約相手方の90%は中小企業
・プログラムに参加している連邦政府機関は30機関
日本でも、地方公共団体が中小企業等の革新的な製品・技術を購入する、トライアル発注が行われています。
しかし、カナダのように、National Research Councilのような組織が革新性等を一元的に評価し、公共事業・調達省が政府内のパートナーを探すといった、国レベルでの積極的な取組は行われていません。
もちろん、革新的な技術に対する資金交付(委託事業、補助金等)は行われていますが、公共調達を活用した積極的な取組は行われていない、と言えるでしょう。
厳しい財政状況のなかで、技術革新を促すためには、カナダのように公共調達を戦略的に活用することも一つの方法かもしれません。
(出典)
Public Services and Procurement Canadaウェブサイト
OECDウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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