Column48 (05/06):公共調達の評価(EU)
Column10「付帯的政策に関わる数値目標の設定と評価(米国)」では、米国中小企業庁(Small Business Administration)が、各府省における中小企業の受注機会促進に関わる取組の達成状況を評価したSmall Business Procurement Scorecardsを公表していることを紹介しました。
今回は、EUが実施している、公共調達全般に関わる評価の仕組みを紹介します。
EUでは、以下の6つの指標でEU加盟国の公共調達の取組を評価しています。
1)一者応札の割合(One Bidder)
・複数者による応札は発注者の選択肢が増えるため、一者応札の割合が低い程、良い調達とされている。
・閾値は、10%以下が十分、10%超20%以内が普通、20%超が不十分
2)不落後の交渉による契約の割合(No calls for Bids)
・応札者が無く、交渉により契約した割合。不落後の交渉による契約の割合が低い程、良い調達とされている。
・閾値は、5%以下が十分、5%超10%未満が普通、10%以上が不十分
3)まとめ買いの割合(Aggregation)
・一者以上でまとめて調達した割合。まとめ買いはより良い価格を引き出しノウハウを交換する機会を得られるため、良い調達とされている。全ての調達で適当な手法ではないが、過度に割合が低いことは、より良い調達の機会を逸していることを示唆している。
・閾値は、10%以上が十分、10%未満が不十分
4)価格のみを落札基準としている割合(Award Criteria)
・落札基準は調達するものに応じて決定されるが、ある程度、価格を重視することはより良い調達につながるため、価格のみを落札基準としている割合が設定されている。
・閾値は、80%未満が十分、80%以上が不十分
5)意思決定における迅速性(Decision Speed)
・競争入札における、入札締切日から契約締結日までの期間。この期間が長くなることは発注者と受注者双方の不確実性を高めるため、短い程、良い調達とされている。
・閾値は、120日未満が十分、120日以上が不十分
6)報告上の問題(Reporting Problems)
・価格情報を公表しない契約の割合。価格情報を公表することで、企業は入札に関わるより適切な意思決定が可能になり、市民は税の使途が明確になるため、割合が低い程、良い調達とされている。
・閾値は、3%以下が十分、3%超が不十分。
上記の6つの指標を基に、総合評価が行われます。
総合評価の閾値は、90%超が十分、80%以上90%以下が普通、80%未満が不十分です。
なお、総合評価の際には、1)一者応札の割合と、2)不落後の交渉による契約の割合は重要指標のため、加重(他の指標の3倍)されるとのことです。
日本でも、各府省等が「調達改善計画の策定(Plan)」、「調達改善計画の実施(Do)」、「調達改善計画の自己評価(Check)」、「改善の取組(Action)」というPDCAサイクルにより、調達改善に取り組むとともに、行政改革推進会議が各府省等の取組をチェックする枠組みが整備されています。
ただし、上記のような複数の指標と閾値を設定し、総合的に評価するような仕組みは整備されていません。
更に調達改善の取組を深化させるために、こうした指標と閾値の設定というのも一案かもしれません。
(参考資料)
European Commissionウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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