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2017-03-11

Column38 (03/11):英国国防省における競争性の無い契約(英国)

今回は、英国会計検査院(National Audit Office)の検査のうち、英国国防省(Ministry of Defence)の競争性の無い契約に係る2001年の検査事例(Non-competitive procurement in the Ministry of Defence)を紹介します。

上記のレポートは、過去5年間、英国国防省の調達(約90億ポンド)の約25%が、競争性の無い契約に依っていることを受け、民間企業における競争性の無い契約の取扱い等も参考に、以下の3点を検査しています。

・競争性の無い契約に係るフレームワークやガイダンス(指針)

・競争性の無い契約の実施方法

・競争性の無い契約により達成しているアウトカム(結果)

検査結果の概要は以下のとおりです。

・競争性の無い契約のプロセスは定義され、職員にも理解されているが、内容が複数の資料にわたっており、更新もされていないため、既存のガイダンス等をレビューし、資料を入手しやすいように配置し、また、常に最新の情報に更新する必要がある。

・競争性の無い契約のプロセスに則り手続きが行われているが、いくつかの重要な部分で改善が必要である。具体的には、契約先による再委託先の管理についての見える化が必要であること、また、10億ポンド以上の競争性のない契約では、競争の不足によりどのようなリスクが生じるか、リスクアセスメントとその結果の記録が必要であること等。

・競争性の無い契約によるアウトカム(結果)は混在している(例えば、価格交渉により費用節減を達成しているが、価格決定の時期が遅い等)。過去の経験をこれまで以上に活用して改善していく必要がある。

検査結果を受けて、英国会計検査院は、英国国防省に対して、フレームワークやガイダンスの更新等を勧告し、英国国防省はこれを受け入れています。

日本でも、平成26年度の防衛省の調達規模は約2兆7,761億円、このうち競争性の無い随意契約は10,417億円と38%を占めています。

また、競争性の不足という意味では、競争入札のうち一者応札が占める契約金額は1,544億円となっています。

日本においても英国と同様に、一定程度、競争性の無い契約が結ばれており、これらの適切な取扱いやモニタリングは重要と言えるでしょう。
  
なお、英国会計検査院では、2015年の競争性の無い契約が88億ポンド(競争性のある契約は99億ポンド)まで増加したことを受け、再度、英国国防省の競争性のない契約についての検査を実施しています。

レポートが公表され次第、また概要を紹介したいと思います。

(参考資料)
National Audit Officeウェブサイト
平成28年度防衛省調達改善計画

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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