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2017-02-28

Column37 (02/28):HUBZone Programに関する検査事例(1)(米国)

Column5「HUBZone Program (米国)」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)において、特定のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、自動的にそれら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。

このプログラム・カテゴリーの1つである、HUBZoneプログラムでは、HUBZone契約の資格を有する中小企業(以下、「HUBZone企業」という)に対するset-asideや単独契約(sole selection)の適用、公開競争(full and open contract competition)の価格評価(元請・下請の両方)における10%の優遇(競争相手が明らかに中小企業である場合を除く)が行われます。

今回は、HUBZoneプログラムの運用について検査した米国会計検査院(Government Accountability Office、以下「GAO」という)のレポート、“SMALL BUSINESS CONTRACTING: Opportunities Exist to Further Improve HUBZone Oversight”(2015)を紹介します。

初めに、HUBZoneとは、歴史的低開発地域(historically Underutilized Business Zone)の略称で、HUBZoneプログラムの対象となる指定地域は、失業率や貧困率等の統計データを基に決定されます。そのため、経済状況等の変化で、定期的に対象地域が見直されるのです。

その結果、以前はプログラムの対象であった地域に所在し、優遇対象となっていた企業が、経済状況等の変化で、指定地域外となり、優遇対象ではなくなるという状況が発生します。

ただし、急に優遇対象でなくなる訳ではなく、緩和措置として、3年間は「非指定地域の優遇企業」として、継続的に優遇対象となります。2015年までに、3,417の「非指定地域」があり、この地域に578の企業が所在しています。

GAOのレポートでは、2つの点を検査しています。

1)HUBZoneプログラムを所管する米国中小企業庁(U.S.Small Business Administration、以下、「SBA」という)は、プログラム対象企業に対して、どのように指定地域の変更を周知しているのか?

2)SBAは、どのようにプログラム対象企業の認定や認定更新手続きを行っているのか?

それぞれの検査結果を簡単にまとめると以下のとおりです。

1)SBAはウェブサイト等で、指定地域の変更を周知しているものの、すべての企業が適時にその変更を認識していない。

2)SBAは、連邦政府との契約金額に応じて、プログラム対象企業の視察等を行っているが、視察企業が優遇措置の更新要件に合致しているか書面で確認しない等、更新の管理に問題がある。

この結果を基に、GAOはSBAに対して、指定地域の変更を優遇対象企業が確実に認識できる仕組みを構築すること、更新プロセスを再評価し更新に関わる管理を徹底すること、という2つの勧告を行い、SBAもこの勧告を受け入れています。

上記のレポートで注目したい点は、優遇対象となる企業が、失業率や貧困率等の統計データを基に、定期的に見直されているという点です。

日本でも、中小企業の受注機会の促進等、公共調達における優遇施策が行われていますが、最新の統計データを基に、施策のターゲットに合致した企業を抽出し、優遇措置を行うといったことはしていません。日本では、幅広い中小企業の受注機会を促進する、薄く・広い施策が実施されていると思います。

もちろん、薄く・広い施策を実施することにより効果が発現する面もあると思いますが、施策のターゲットを絞り、期間を限定して手厚い優遇措置を講じ、効果を検証する、といったアプローチも有効ではないかと思います。

(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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