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2017-02-12

Column33 (02/12):中小企業の受注機会増大に関わる取組(2)(英国)

Column28「公共調達における付帯的政策(2)(G-cloud)(英国)」で紹介したとおり、英国では、英国内閣府が所管するエージェンシー(executive agency)の一つ、Crown Commercial Service(以下、CCSという)が、政府との契約を締結した中小企業の事例を紹介しています。

CCSが紹介する事例は、政府との契約を締結したことで、中小企業がどのような発展を遂げたのか?、という視点で整理されています。

Column32「中小企業の受注機会増大に関わる取組(1)(英国)」では、事例の一つであるFox Feeds社を取り上げました。

今回は、Montagu Evans社の事例を取り上げます。

Montagu Evans社は、不動産に関するアドバイザリー業務等を行っている創業100年超の会社です。

2009年、同社は、創業以来最大の経営難に陥り、会社の持続的な成長に向け、公的機関からの受注を増やすという判断をしました。既にいくつかの公的機関と契約を結んでいたものの、受注を増やすためには、公的機関とフレームワーク合意を結ぶ必要があると考え、2012年、Estates Professional Servicesに関するフレームワーク合意を結んだのです。

フレームワーク合意とは、「2006年の英国公共契約規則に規定された“長期指名候補者と事前合意制度”のことで、長期指名候補者(フレームワーク企業)を選定した上で、これら企業との間で4年を限度とする一定期間内の個別発注(コールオフ)に関する受注者及び契約額の決定方法、契約条件等(フレームワーク)に予め同意する方式」です。

Montagu Evans社は、政府とのフレームワーク合意を締結したことで、サービスの利便性が高まり、政府機関との契約が増加し、政府機関との長期的な関係も構築できたと報告しています。

その結果、同社の従業員は225名から325名に増加し、売上も2012年比で約1.5倍の4,000万ポンド(約57億円)まで成長した、とのことです。

Montagu Evans社の事例は、企業が経営難に陥った際に、官公庁との契約を活用し、その後の成長(雇用の増加など)が実現したという、官公庁の契約が成長の下支えをした点がポイントだと思います。

日本でも、Column2「公共調達に関する制度」で紹介したとおり、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)」(昭和41年法律第97号)があり、官公需法は、国等が物件の買入れ等の契約を締結する場合における新規中小企業者をはじめとする中小企業者の受注の機会を確保するための措置を講ずることにより、中小企業者が供給する物件等に対する需要の増進を図り、もって中小企業の発展に資することを目的としています。

これらの目的が達成されているか検証するため、少なくとも、以下のような視点で、事例を積み上げていくことは重要ではないでしょうか。

・公的機関との契約が一中小企業の発展に貢献したのか?(定性・定量両面で把握することが望ましい。定量的には売上や従業員数等で把握することが考えられる。)

・公的機関との契約が産業もしくは中小企業全体の発展に貢献したのか?

・公的機関との契約が他機関との契約では成しえなかった役割を果たしたか?(官公庁との契約が経営難の企業の成長を下支えし、その後の成長に繋がった等)

(出典)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
国土技術政策総合研究所資料第908号「英国・米国における包括・個別二段階契約方式-フレームワーク合意方式(FA)と数量未確定契約方式(ID/IQ)-」

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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