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2017-01-22

Column30 (01/22):女性活躍推進に向けた公共調達の活用(4)

Column7「Woman Owned Small Business Program(米国)」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)において、特定のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、自動的にそれら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。

このプログラム・カテゴリーの1つである、Woman Owned Small Businessプログラムでは、要件を満たす女性が経営する中小企業(以下、「女性経営中小企業」という)及び女性が経営する経済的に不利な中小企業に対するset-asideと一定の条件に基づく単独契約(sole selection)の優遇が行われることになっています。

このWoman Owned Small Businessプログラムの運用状況はどのようなものでしょうか?

今回は、Woman Owned Small Businessプログラムの運用について検査した、米国会計検査院(Government Accountability Office、以下「GAO」という)のレポート、“WOMEN-OWNED SMALL BUSINESS PROGRAM: Certifier Oversight and Additional Eligibility Controls Are Needed”(2014)を簡単に紹介します。

GAOのレポートは、3つの点を検査しています。

1)Woman Owned Small Businessプログラムの参加企業は、きちんと参加要件を満たしているか?

2)Woman Owned Small Businessプログラムでは、プログラム参加企業を認定するプロセス(認定を受けるためには、企業自ら所定の書類を提出し認定を受けるパターンと第三者機関が認定手続きを代行する2つのパターン)がありますが、米国中小企業庁(Small Business Administration、以下、「SBA」という)は、この認定プロセスをモニタリングしているか?

3)実際に、Woman Owned Small Businessプログラムにより、女性経営中小企業の連邦政府からの受注機会は増加しているか?

それぞれの検査結果を簡単にまとめると以下のとおりです。

1)Woman Owned Small Businessプログラムの対象となり、契約を締結した企業の一部は、認定要件を満たしていない企業であった。

2)SBAは、認定手続きを代行する第三者機関を十分にモニタリングしておらず、その影響等で、認定要件を満たしていない企業が含まれている。

3)Woman Owned Small Businessプログラムに基づくset-asideは増加しているが、女性経営中小企業が米国連邦政府と締結している契約の1%未満に過ぎない(女性経営中小企業の連邦政府との契約のうち約39.7%は競争の結果、約59.7%はWoman Owned Small Businessプログラムに基づかない(他の理由による)set-aside)

この結果を基に、GAOはSBAに対して、第三者機関をモニタリングするための手続きを策定し実施すること、プログラムの認定を受けた企業をサンプルチェックする等検証を行うこと、という2つの勧告を行い、SBAもこの勧告を受け入れています。

日本でも、昨今、女性活躍推進に向けて公共調達を活用する取組が積極的に行われています。

ただし、この取組は、各府省等が価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)を行う場合、女性活躍推進法に基づく認定企業(えるぼし認定企業)や、次世代法に基づく認定企業(くるみん認定企業・プラチナくるみん認定企業)、若者雇用促進法に基づく認定企業(ユースエール認定企業)を加点評価するものです。

公共調達において女性活躍推進企業を優遇するための特別な認定プロセスが設けられている訳ではありません。

そのため、えるぼし認定企業等の審査プロセスが適切に行われていれば、GAOのレポートが指摘したような、認定要件を満たしていない企業が含まれたり、認定代行機関のモニタリングが不十分であったりするような状況は生じにくいと思います。

ただし、3)で指摘したような、女性経営中小企業に対する優遇措置の結果を検証することは、日本においても重要でしょう。

Column29「競争か補助金か(英国)」等でも書いたとおり、特定の政策目的を達成するためには、公共調達以外の様々な政策手段が考えられ、仮に、特定の政策目的の達成に公共調達を活用するならば、活用したことの有効性、結果の検証は必要だと思います。

(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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