Column28 (12/29):公共調達における付帯的政策(2)(G-cloud)(英国)
Column23「公共調達における付帯的政策(1)(英国)」では、英国中央政府が、公共調達における中小企業の受注機会を増やすため、様々な取組を行っていることを紹介しました。
今回は、その取組の一つである「G-Cloud」を紹介します。
「G-Cloud framework」は、政府機関向けのクラウド・コンピューティング・サービスに関するフレームワーク合意です。
はじめに、フレームワーク合意とは、「2006年の英国公共契約規則に規定された“長期指名候補者と事前合意制度”のことで、長期指名候補者(フレームワーク企業)を選定した上で、これら企業との間で4年を限度とする一定期間内の個別発注(コールオフ)に関する受注者及び契約額の決定方法、契約条件等(フレームワーク)に予め同意する方式」です。
G-Cloud frameworkは、クラウドサービスを提供するサプライヤーと政府が基本的なサービス利用についての合意を結び、合意を結んだサプライヤーは、オンライン市場(Digital Marketplace)にサービス価格、サービスの内容、契約条件等を登録することができます。
政府機関は、サービスの購入ごとに諸手続き(発注先の選定等)を行う必要がなく、既に登録されているサービス価格等を基にサービスを利用するか決定し、利用した場合は、利用した分のサービス料だけ支払うことになります。
このG-Cloud frameworkを通じて、英国中央政府は中小企業からもサービスを購入しており、2012年~2014年にかけて、約£4億の調達が行われ、このうち48%が中小企業からの調達であったと報告されています。
さらに、Crown Commercial Serviceでは、公共調達に参加し、契約に至った中小企業の事例を紹介していますが、事例の一つであるDevOpsGuys社では、G-Cloud frameworkにより受注に至り、政府機関からの受注実績が会社の信頼性を向上させ、民間企業からの受注にプラスに働いたと報告されています。
もちろん、オンライン市場の構築にかかるコストを上回る便益が発生したかという視点で評価する必要はありますが、クラウドサービスのような新しいサービスを提供する事業者は、新規の中小企業者であることも想定され、そのような場合、特に発注者が事業者を把握・選定する時間や、受注者の契約手続に関わる時間を節約するため、こうした予め価格を合意した上で、オンラインでサービスを購入できる仕組みは有効かもしれません。
日本でも、Column18「新規中小企業の受注機会増大に関わる取組(米国)」で紹介したとおり、改正官公需法に基づき、新規中小企業者への配慮(入札の際に実績を過度に求めない、少額随意契約の際に新規中小企業者を見積先に含める等)や「ここから調達サイト」(創業・設立10年未満で行政機関との取引を希望する新規中小企業者を検索することが可能なサイト)の開発・運営等が行われています。
「ここから調達サイト」は、新規中小企業者を検索するサイトですが、例えば、サイト上に主要なサービス・製品の価格を提示し、サイト上で(少額随意契約の範囲内の)発注が可能な仕組み等も有効かもしれません(発注サイトは、政府機関のみアクセス可能とする等の様々な工夫は必要だと思いますが)。
(出典)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
国土技術政策総合研究所資料第908号「英国・米国における包括・個別二段階契約方式-フレームワーク合意方式(FA)と数量未確定契約方式(ID/IQ)-」
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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