Column27 (12/25):サプライヤーとの関係構築(英国)
英国中央政府における公共調達については、Column22「公共調達に関する制度(英国)」で公共調達に関わる主な制度、Column25「調達政策における主導機関(英国)」で公共調達において主導的な役割を果たす政府機関等について紹介しました。
今回は、英国中央政府において、サプライヤーとの関係をどのように構築しているのか?、2011年に英国中央政府が新たに導入した方策について紹介します。
はじめに、英国中央政府では、公共調達の全てのサプライヤー(中小企業、非営利組織、相互会社、大企業等)のうち、中心的な役割を担う企業を「戦略的サプライヤー」と位置付けています。
具体的には、数多くの府省と年間合計1億ポンド超の契約実績がある企業や、特定の分野で重要な役割を果たしている企業が、「戦略的サプライヤー」とされています。
2016年12月時点の「戦略的サプライヤー」は、アクセンチュア、DHL、富士通、IBM、ヒューレットパッカード、ロッキード・マーティン等、幅広い業種に属する33社です。
政府は、この「戦略的サプライヤー」との関係をマネジメントすることの重要性(「戦略的サプライヤー」が提供するサービスの悪化が、公共サービス、ひいては納税者に対する影響の大きさ)を踏まえ、「戦略的サプライヤー」との関係を構築するために、各社それぞれと関係を構築するのではなく、各社が「Crown Representative」という担当者1名を配置し、この各担当者と内閣府の効率化・改革グループ(Efficiency and Reform Group)の幹部、法律顧問が参加する委員会(Commercial Relationships Board)を設置する仕組みを導入しています。
この委員会は、政府に対して以下の助言等を行っているのです。
・政府の調達ニーズに対して一つの戦略的な考え方を示す(そうすることで政府の調達ニーズが市場との対話を踏まえたものとなる)
・コスト削減可能な領域を特定する
・サプライヤーに関わる分野横断的な重点課題を示す
「戦略的サプライヤー」の担当者が一堂に集まることで、情報を集中させ、モニタリングすることが可能になるとともに、政府の調達の全体像を理解しやすくなるというメリットがあるようです。
日本では、調達における公平性の確保等の観点から、政府と特定のサプライヤーとの対話の場を設ける機会はあまり無いように思いますが、複数のサプライヤーの情報を効率的に収集し、政府と複数のサプライヤーがお互いに効率的な調達を実現するために、何等かの建設的な議論の場を設けるというのも一つの方策かもしれません(ただし、議論の場が形式的なものとならないために、どのように公式かつ建設的な議論の場とするかという工夫が必要でしょう)。
(参考資料)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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