Column24 (12/02):企業からの問合せ対応(Mystery Shopper)(英国)
Column23「公共調達における付帯的政策(1)(英国)」では、英国中央政府における中小企業の受注機会の増加に向けた取組の一つとして、Mystery Shopperという取組があることを紹介しました。
以下では、このMystery Shopperの具体的な内容を紹介します。
Mystery Shopperとは、中央政府、イングランドの地方自治体・NHSトラストの発注者と元請事業者について、契約相手方の企業や契約相手方となり得る企業が、何らかの問題を発見した場合、Crown Commercial Service(以下、「CCS」と略称)に問合せし、CCSが調査を実施、調査結果を企業へフィードバックするという仕組みです。
この制度は2011年に導入され、2015年には、Small Business Enterprise and Employment Actの成立により、CCSの調査が法的根拠を有するようになり、また、CCSは問題が顕在化する前に、その問題を発見し改善し得るよう、スポット調査を行うようになりました。
スポット調査の対象はランダムに選定され、ウェブ上で公表されている調達関連の資料や、発注者から聞き取りにより調査が行われます。
CCSは、調査の結果、改善の必要があると判断した場合は、発注者に手続きを改めるよう要請するとともに、同じような問題が今後生じないよう発注機関に働きかけたり、発注者へ好事例の周知等を行っています。
また、Mystery Shopperの調査結果は公表されており、2015年から2016年にかけてのprogress reportを見ると、以下のような特徴が示されています。
・問合せ企業の大部分は、調達へ参加する意欲はあるものの、参加障壁があると感じている中小企業
・企業からの問合せは、2013年(問合せ件数233件)をピークに、2015年の公共契約規則の改正により約18%減少
※2015年の公共契約規則の改正内容については、Column22「公共調達に関する制度(英国)」を御覧ください。
・企業からの問合せの64%は、調達プロセス(調達に関わる書類が長く複雑である等)に関わるもの(調達戦略等に関わるものではない)
・CCSによる調査の結果、問合せの95%は改善に向かっている(改善とは、CCSが発注機関の調達手続きについて何らかの改善対応をしたこと、問合せ企業がプロセスを理解できるよう支援したことを指しています)
日本でも、中小企業からの問い合わせ窓口として、国等の発注機関官公需相談窓口や、官公需総合相談センターが開設されています。
しかし、企業からの問合せについての調査の実施や、問合せ企業への調査結果のフィードバックが制度化されている訳ではなく、また、問合せ内容とその対応がどのようなものだったか公表されている訳ではありません。
地道ではありますが、一つ一つの企業からの問合せに対応し、その結果を公表することで、問題を着実に改善していくMystery Shopperのような取組は、日本における中小企業の受注機会の拡大のための参考になるかもしれません。
(参考資料)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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