Column19 (11/03):グリーン調達(1)(日本)
公共調達では、調達における公正性、厳正性及び経済性を確保することが求められています。さらに、このような、公正性・厳正性と経済性の調和を前提として、一定の政策目的を達成するための配慮を行うことも求められています。様々な政策的目的を実現するために契約の場を活用すること、いわゆる「付帯的政策」の推進が求められているのです。
このような一定の政策目的を達成するために公共調達を活用する手法は、日本で様々な形で行われています。
Column6「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(1)」、Column8「女性活躍推進に向けた公共調達の活用(2)」では、女性活躍推進に向けた公共調達の活用を紹介しました。
また、Column11「障害者就労施設等からの物品等の調達」では、障害者就労施設等で就労する障がい者、在宅就業障がい者等の自立促進に向けた公共調達の活用を紹介しました。
今回は、環境負荷の少ない持続可能な社会の構築に向けて公共調達を活用する取組(以下、「グリーン調達」という)を紹介します。
はじめに、グリーン調達に関わる制度としては、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(平成13年4月1日施行、以下「グリーン購入法」という。)があります。
グリーン購入法は、国等が率先して環境物品等(環境負荷低減に資する製品・サービス)の調達を推進すること、また、環境物品等に関する適切な情報提供を促進することにより、環境物品等への需要の転換を図り、持続的可能な社会の構築を目指しています。
環境物品等の調達を推進する際の基本的な枠組みは、他の付帯的政策と類似しています。調達の基本方針を閣議決定し、これを基に、国等の各機関が方針を作成し、方針に基づいて調達を行い、実績を取りまとめ公表するのです。
一方、他の付帯的政策と異なる点は、グリーン調達では、基本方針において、以下のように特定調達品目(特に重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類)と、環境負荷低減に資する判断基準が具体的に示され(判断基準が示されていない一部の品目もあります)、この特定調達品目及び判断基準が、適宜見直されている点です。
<特定調達品目の判断基準及び配慮事項(例:バインダー)>
【判断の基準】
・金属を除く主要材料が紙の場合にあっては、紙の原料は古紙パルプ配合率 70%以上であること。また、紙の原料にバージンパルプが使用される場合にあっては、その原料の原木は、伐採に当たって、原木の生産された国又は地域における森林に関する法令に照らして手続が適切になされたものであること。ただし、間伐材により製造されたバージンパルプ及び合板・製材工場から発生する端材、林地残材・小径木等の再生資源により製造されたバージンパルプには適用しない。それ以外の場合にあっては、文具類共通の判断の基準を満たすこと。
【配慮事項】
・表紙ととじ具を分離し、部品を再使用、再生利用又は分別廃棄できる構造になっていること。
・バージンパルプが使用される場合にあっては、その原料の原木は持続可能な森林経営が営まれている森林から産出されたものであること。ただし、間伐材により製造されたバージンパルプ及び合板・製材工場から発生する端材、林地残材・小径木等の再生資源により製造されたバージンパルプには適用しない。
官公需法でも官公需特定品目が定められ、障害者優先調達推進法の基本方針でも品目が参考として示されていますが、グリーン調達のように、品目ごとの判断基準や配慮事項(現時点で判断の基準として一律に適用することが適当でない事項であっても環境負荷低減上重要な事項)は示されていません。また、品目について頻繁に見直しが行われている訳でもありません。
付帯的政策の推進における透明性を確保する上では、品目や品目ごとの判断基準を明確にし、これを適時に見直すことは重要な取組と言えるでしょう。
ただし、いくら品目や判断基準が具体化されていても、そもそも品目等の選定プロセスが適切かつ明確にされていなければ意味がありません。そこで、特定調達品目をどのように決定しているのか見てみましょう。
品目の検討に当たっての主要な観点として、以下の2点が示されています。
1.物品等の品質等の一般的事項を満足していること
・品質、機能、供給体制等、調達される物品等に期待される一般的事項を満足していること
・環境負荷低減効果に対してコストが著しく高くない、または、普及による低減が見込まれること
2.環境負荷低減効果が確認できること
・客観的に環境負荷低減効果が確認できること(環境負荷低減効果の評価方法について科学的知見が十分に整っていること)
・数値等の明確性が確保できる判断の基準の設定が可能であること
ここで重要な点は、環境負荷低減効果については数値等の明確性が求められているものの、環境負荷低減効果に対する妥当なコストについては数値等の明確性が求められていない点です(例えば、環境物品は、環境負荷低減効果の無い製品価格の10%増以内であれば価格が著しく高くないと見なす等)。
難しくはありますが、仮に、透明性、明確性を確保しつつ付帯的政策を積極的に推進するためには、会計法令における判断基準(経済性の追及)とは異なる基準(上記のような環境負荷低減効果の無い製品価格の10%増以内であれば価格が著しく高くない等)を検討・明確化し、適宜、見直しを行うことが必要なのではないでしょうか。
(参考資料)
環境省ウェブサイト「グリーン購入法.net」
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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