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2016-09-30

Column12 (09/30):付帯的政策に関わる評価(1)(米国)

Column10「付帯的政策に関わる数値目標の設定と評価(米国)」では、中小企業全体及び4つのカテゴリーごとに契約金額に関わる数値目標が設定されていること、また、中小企業庁(Small Business Administration。以下、「SBA」と略称)が、各府省における中小企業の受注機会促進に関わる取組の達成状況を評価したSmall Business Procurement Scorecardsを公表していることを紹介しました。

<契約目標>
・Small Business: 23%
・Women Owned Small Business: 5%
・Small Disadvantaged Business: 5%
・Service Disabled Veteran Owned Small Business: 3%
・HUBZone: 3%

SBAが公表しているSmall Business Procurement Scorecardsとは、どのようなものなのでしょうか?今回は、Small Business Procurement Scorecardsの算出方法を紹介します。

Small Business Procurement Scorecardsとは、各府省の中小企業への発注に関わる取組を6段階で評価するものです。6段階とは、A+(達成度120%以上150%以下)、A(100%以上120%未満)、B(0%以上100%未満)、C(80%以上90%未満)、D(70%以上80%未満)E(70%未満)です。

この6段階評価の結果はどのように導かれるのでしょうか?

6段階評価の結果を導くための要素は3つあります。第一に「元請契約の達成度」、第二に「下請契約の達成度」、第三に「7つの成功要因」です。この3つの要素には重みづけがされており、「元請契約の達成度」は80%、「下請契約の達成度」と「7つの成功要因」は10%です。6段階評価において、各府省の元請契約の達成が重視されていることが分かります。

具体的な算出例は、以下のとおりです。

元請契約の達成度を例にとると、元請契約の小項目(中小企業全体、Women Owned Small Business等)ごとに、目標に対する達成度を算出し、小項目ごとに予め設定されている重みづけを行い、小項目ごとの達成度を算出します。この小項目ごとの達成度を合計し、さらに各要素の重みづけ(80%)を行った結果が、元請契約の達成度です。

<元請契約の達成度(加重80%)の例>
・中小企業全体:(実績)30.0% /(目標)25.0% =(達成度)120.0% ×(加重)60% =72.0%
・Women Owned Small Business:(実績)15.0% /(目標)5.0% =(達成度)150.0%(注1) ×(加重)10% =15.0%
・Small Disadvantaged Business:(実績)18.0% /(目標)5.0% =(達成度)150.0% ×(加重)10% =15.0%
・Service Disabled Veteran Owned Small Business:(実績)1.5% /(目標)3.0% =(達成度)50.0% ×(加重)10% =5.0%
・HUBZone:(実績)3.0% /(目標)3.0% =(達成度)100.0% ×(加重)10% =10.00%

・元請契約の達成度(上記小項目ごとの達成度の合計) (72.0% + 15.0% + 15.0% + 5.0% + 10.0%)×(加重)80% =93.6%

下請契約の達成度の算出方法は、元請契約と同一ですが、重みづけが10%であることに留意が必要です。ここでは、下請契約の達成度を12.0%と仮定します。

最後に、7つの成功要因です。この7つの成功要因の評価結果は、小規模・条件不利事業者活用促進室(Office of Small and Disadvantaged Business Utilization)(注3)に設置されている専門家会議の評価結果です。7つの要因それぞれで、5段階評価(優良(1.0)、平均以上(0.9)、並(0.8)、平均以下(0.7)、不十分(0.6))を行い、要因ごとのスコアを合計し、平均した上で、要素の重みづけ(10%)を行った結果が7つの成功要因の達成度です。

<7つの成功要因(加重10%)の例>
・中小企業の活用に関する積極性:1
・上級管理職の関与:0.9
・中小企業の契約データの質:1
・発注担当者のトレーニング:1
・中小企業に対する働きかけ・支援:0.8
・中小企業不適合型一括発注契約(bundling契約)(注2)の回避:1
・小規模・条件不利事業者活用促進室(Office of Small and Disadvantaged Business Utilization)(注3)の取組:1

・7つの成功要因の達成度 (1 + 0.9 + 1 + 1 + 0.8 + 1 + 1)/ 7 ×(加重)10% =9.57%

上記の計算を基に、「元請契約の達成度」(93.6%)、「下請契約の達成度」(12.0%)、「7つの成功要因の達成度」(9.57%)を合計した値(115.17%)を6段階評価した結果が、Small Business Procurement Scorecardの評価結果となります。算出例の合計値(115.17%)はA(100%以上120%未満)です。

2015年度のSmall Business Procurement Scorecardsを見ると、24府省のうちA+が3府省、Aが18府省、Bが3府省、C、D、Eは0府省となっています。

Column10「付帯的政策に関わる数値目標の設定と評価(米国)」でも言及したとおり、日本では中小企業庁による府省ごとの評価は公表されていませんが、Small Business Procurement Scorecards等のように、中小企業庁が各府省の取組を客観的に評価し、さらなる取組を促すことも考えられるかもしれません。

(注1)達成度の上限値は150%
(注2)不適合型一括発注契約とは、直近の契約において1者以上の中小企業が実施又は中小企業の受注に適していた契約をまとめることで、a)業務の多様性、規模、専門性が拡大、b)想定される契約金額が増加、c)実施地域が分散、d)左記a~cの組み合わせにより、中小企業1者での受注に適さない契約
(注3)小規模・条件不利事業者活用促進室の主な役割は、a)契約のうち中小企業不適合型一括発注を特定すること、b)中小企業の参加促進に向け、発注担当者と調整を行うこと、c)中小企業不適合型一括発注契約の下請契約として中小企業の参加を促進すること等

(参考資料)
U.S.Small Business Administrationウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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