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2016-09-18

Column9 (09/18):Service Disabled Veteran Owned Program(米国)

Column3「公共調達における付帯的政策(米国)」で紹介したとおり、米国連邦政府では、契約担当官は、3,000ドル~150,000ドルの調達(一部例外あり)において、以下のプログラム・カテゴリーの対象となっている中小企業にset-aside(中小企業向けの留保)を適用し、自動的にそれら中小企業との契約を締結することが義務付けられています。

<set-asideの対象>
・8(a)Business Development
・HUBZone Program
・Woman Owned Small Business Program(includes Economically Disadvantaged Woman Owned Small Business concerns)
・Service Disabled Veteran Owned Program

上記のプログラム・カテゴリーの内容は、どのようなものなのでしょうか?ここでは、Column4「8(a) Business Development Program (米国)」Column5「HUBZone Program (米国)」Column7「Woman Owned Small Business Program(米国)」に続き、Service Disabled Veteran Owned Programを取り上げます。

Service Disabled Veteran Owned Programは、一定の要件を満たす時、傷痍退役軍人所有中小企業に対してset-asidesや単独契約を認めるものです。この一定の要件とは、傷痍退役軍人が日々の業務の管理監督を行っている等、実際に傷痍退役軍人が経営に参画していること等を意味しています。

Service Disabled Veteran Owned Programには、他のset-asideのプログラム(HUBZone Program等)と同様、数値目標が設定されており、政府全体で元請契約金額の3%、下請契約金額の3%を支出するという目標が設定されています。

2015年度の政府全体の実績を見ると、Service Disabled Veteran Owned Programの元請契約に関わる実績は3.93%と、目標の3%を上回っている一方、下請契約に関わる実績は1.80%と目標の3%を下回っています。

※Women Owned Small Business Programでは元請契約、下請契約の目標(各々5.0%)に対して5.05%、6.0%といずれも達成しているのに対して、HUBZone Programでは、元請契約、下請契約の目標(各々3.0%)に対して1.82%、1.20%といずれも未達成。

Service Disabled Veteran Owned Programの下請契約の目標が未達成の背景・理由は定かではありませんが、少なくとも、Service Disabled Veteran Owned Programの今後の改善方策として、下請契約においてもより積極的に傷痍退役軍人所有中小企業を活用すること、が挙げられるでしょう。

日本でも、例えば、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律では、中小企業者に関する国等の契約の基本方針が策定され、このなかで府省ごとの契約目標が設定されています。しかし、これはあくまで元請契約のみの目標であり、下請契約も含めて調達の実態を把握し、目標を設定している訳ではありません。

もちろん、行政機関からの発注といえども、下請契約は民・民の契約のため、どこまで下請契約で政策的な配慮を求めるかという点や、下請契約を含む実態を把握することによる行政コストの増大等、様々な課題はありますが、少なくとも実態を把握し、改善の有無や改善方策についてより深く検討するためには、公共調達における下請契約の実態をこれまで以上に把握することも考えられるでしょう。

(参考資料)
U.S.Small Business Administrationウェブサイト

Federal Register Vol. 81, No. 42

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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