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2016-09-09

Column6 (09/09):女性活躍推進に向けた公共調達の活用(1)

公共調達では、調達における公正性、厳正性及び経済性を確保することが求められています。さらに、このような、公正性・厳正性と経済性の調和を前提として、一定の政策目的を達成するための配慮を行うことも求められています。様々な政策的目的を実現するために契約の場を活用すること、いわゆる「付帯的政策」の推進が求められているのです。

このような一定の政策目的を達成するために公共調達を活用する手法は、日本でどのような形で行われているのでしょうか?今回は、この取組の一つである、女性活躍推進に向けた公共調達の活用を紹介します。

女性活躍推進に向けた公共調達の活用については、調達における公正性・厳正性と経済性を確保しつつ、女性活躍推進に取り組む企業を入札で高く評価したり、発注先候補となる機会を増やすことで、企業の女性活躍推進を誘導する手法が取られています。

具体的には、「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」(平成26年8月5日付け男女共同参画推進本部決定)において、以下の2点が示されています。

・総合評価落札方式・企画競争方式において、男女共同参画に取り組む企業等を評価する
「男女共同参画等に関連する調査・広報・研究開発」、「女性が重要な対象者である広報等」について、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス(以下「男女共同参画等」という)等に関する評価項目を設定して、男女共同参画等に取り組む企業を高く評価する。

・発注先候補となる機会を増大する
指名競争入札において、指名基準に該当する企業に男女共同参画等に取り組む企業や女性経営企業がある場合、当該企業を指名先に含める。また、少額随意契約の際、男女共同参画等に取り組む企業や女性経営企業を見積先に含める。

既に、各府省では、上記の取組が進められており、過去3年間の実績を見ると、平成24年度(3府省、17事業、約2億8,700万円)、平成25年度(6府省、25事業、約6億2,800万円)、平成26年度(6府省、32事業、約10億3,900万円)と、徐々に取組が広がってきていることが分かります。

それでは、このような取組において、今後重要となる点はどのようなものなのでしょうか?以下の2点が挙げられます。

1.企業の女性活躍推進を評価する際に、適切な項目・指標を設定すること
企業の女性活躍推進を誘導する手法の一つとして、「総合評価落札方式・企画競争方式において、男女共同参画に取り組む企業等を評価する」手法が採用されていますが、この手法を採用する場合、「どのような項目・指標で評価するか?」が重要です。

例えば、管理職に占める女性比率だけを評価項目・指標として設定した場合、ある意味、女性の中途採用を瞬間的に増やし、比率を上げることだけに注力し、本来の意味での女性活躍推進が行われていない企業を高く評価してしまう可能性も考えられます。企業における真の女性活躍推進を促すためには、企業における賃金管理や採用、配置、処遇等の雇用管理について、複数の評価項目・指標を設定し、企業の女性活躍推進に向けた全体的な取組を評価することが重要です。

2.女性活躍推進に積極的に取り組み始めた企業も評価すること
既に女性活躍が進んでいる企業への発注を増やすだけではなく、現在、女性活躍推進が進んでいないものの、女性活躍推進に積極的に取り組み始めた企業への発注を増やすことも、公共調達の重要な役割だと思います。この場合、現在の評価指標の実績は芳しくなくても、女性活躍推進に関する今後の方針や推進体制等をきちんと確認し、意欲のある企業を育てていく視点も重要です。

(参考資料)
内閣府ウェブサイト「ポジティブ・アクション-公共調達・補助金を活用した女性の活躍推進-」
厚生労働省委託事業「ポジティブ・アクション情報ポータルサイト」

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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