Column94 (5/25):オフィス家具の調達(英国)
英国では、Column22「公共調達に関する制度(英国)」、Column25「調達政策における主導機関(英国)」で紹介したとおり、内閣府が所管するエージェンシー(executive agency)の一つ、Crown Commercial Service(以下、「CCS」と略称)が、調達政策の主導的な役割を果たしています。
具体的には、中央政府や地方政府、それ以外の公的機関が共通して調達するモノ・サービスのフレームワーク契約(※)に関わる調整等、各機関の調達改善に向けた様々なサポートをしています。
※フレームワーク合意とは、「2006年の英国公共契約規則に規定された“長期指名候補者と事前合意制度”のことで、長期指名候補者(フレームワーク企業)を選定した上で、これら企業との間で4年を限度とする一定期間内の個別発注(コールオフ)に関する受注者及び契約額の決定方法、契約条件等(フレームワーク)に予め同意する方式」です。
CCSがサポートする調達分野は多岐に渡りますが、そのうちの一つに、“Building”という施設関連の分野(施設整備・管理、施設で利用するガス・水道等のエネルギーの調達、オフィス家具の調達等)があります。
この施設関連分野では、2016年〜2017年にかけて、CCSのサポートにより、50百万ポンドのコスト削減が達成できた、と報告されています。
今回は、施設関連分野のコスト削減手法の一つである、オフィス家具のフレームワーク契約を紹介します。
オフィス家具のフレームワーク契約は、3つの調達単位(ロット)に別れています。
・High spec furniture(受付で使用する家具等、高品質の家具)
・Office furniture(一般的なデスク、椅子等、機能的な家具)
・Residential furniture(ベッド等の住居で使用する家具)
そして、上記3つのロットそれぞれについて、以下の3つの調達方法が選択可能になっています。
・カタログからの調達(2kポンド以下)
・カタログに掲載されているサプライヤーからの直接調達(2kポンド以下)
・カタログに掲載されている商品・価格についての追加的な競争を経た調達(2kポンド超)
注目したい点は、20,000ポンド超(約290万円超)の場合のみ、「カタログに掲載されている商品・価格についての追加的な競争を経た調達」が可能になっている点です。
競争手続きには発注者、応札者双方に一定の手続きコストが発生しますが、290万円超であれば、その手続きコストを容認しても、案件ごとに更なるコスト削減効果が見込まれると、判断されているのでしょう。
日本でも、予算決算及び会計令により、予定価格が一定金額を下回る場合(工事又は製造で250万円未満、財の購入で160万円未満等)、原則、2者以上からの見積書を徴取する随意契約(少額随意契約)が認められ、入札手続きが簡素化されています。
しかし、この金額基準は長らく改定されていません。現在の入札手続きのコストを踏まえて、どの程度の金額基準であれば、どのような調達方法が効率的か?、現状を踏まえて再検討することも必要かもしれません。
(出典)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
国土技術政策総合研究所資料第908号「英国・米国における包括・個別二段階契約方式-フレームワーク合意方式(FA)と数量未確定契約方式(ID/IQ)-」
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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