Column18 (10/29):新規中小企業の受注機会増大に関わる取組(米国)
米国連邦政府における中小企業の受注機会増大に関わる取組については、Column3「公共調達における付帯的政策(米国)」や、Column15「地域における中小企業の受注機会の促進(米国)」等で紹介してきました。
ここでは、同じく中小企業、特に新規中小企業の受注機会増大に関わる取組として、中小企業庁(Small Business Administration。以下、「SBA」と略称)による中小企業の履行証明プログラム(Certificate of Competency program。以下、「COC」と略称)を取り上げます。
SBAによる中小企業の履行証明プログラムとは、低い価格を提示したにも関わらず、契約担当者から履行不能と判断された中小企業を、SBAが再評価し、仮に履行可能と判断した場合は、SBAから契約担当者へ履行可能であることを通知するプログラムです。
基本的なプロセスは以下のとおりです。
1.契約担当者は、中小企業が低い価格を提示したにも関わらず履行不能と判断した場合、SBAにその旨を通知する。
2.SBAは、当該中小企業にCOCプログラムを申請するか確認し、申請する場合は、中小企業から所定の書類を受け取る。
3.SBAは、所定の書類やその他の情報を基に、当該中小企業の履行可能性を再評価する。
4.SBAは、履行可能と判断した場合、契約担当者へその旨を通知する。
5.契約担当者は、SBAからの通知を受けて、当該中小企業と契約を締結する、
6.SBAは契約締結後、当該中小企業のパフォーマンスをモニタリングする。
このCOCプログラムの導入により、SBAの中小企業に対する支援、特に履行不能と判断されやすい新規の中小企業に対する支援は大きく強化されたと指摘されています。
日本でも、改正官公需法に基づき、新規中小企業者への配慮(入札の際に実績を過度に求めない、少額随意契約の際に新規中小企業者を見積先に含める等)や「ここから調達サイト」(創業・設立10年未満で行政機関との取引を希望する新規中小企業者を検索することが可能なサイト)の開発・運営等が行われていますが、上記のような契約担当者の判断に不服のある中小企業を中小企業庁が再評価するような取組は行われていません。
中小企業庁がこのような再評価を行う主体となるためには、再評価にあたっての基準の設定や評価に使用するデータの整備、評価を行う人材の育成等、様々なインフラ整備や、各府省との協議が必要ですが、中小企業庁が新規中小企業の受注機会増大に向けてこれまで以上に積極的な役割を果たすためには、このような取組を検討することも一案かもしれません。
(参考資料)
U.S. Small Business Administrationウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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