Column177(9/3):カーボンニュートラルに向けた公共調達の取組(英国)
我が国では、年間12億トン超の温室効果ガスが排出されています。
2050年までにこれを実質ゼロにするカーボンニュートラル、また、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指して、政府全体として、再生可能エネルギーの主力電源化に資する施策等が進められています。
公共調達における取組としては、例えば、内閣官房行政改革推進本部事務局と環境省が、各府省庁の施設で使用されている電力を再生可能エネルギー比率30%以上とするよう要請する等の取組が行われています。
このようなカーボンニュートラルに向けた公共調達における取組は、諸外国でも進められているのでしょうか?
諸外国でも積極的に進められています。
Column161「公的機関における温室効果ガスの削減(英国)」で紹介した通り、英国では、Carbon Net Zeroに向けた公共調達における取組を推進するため、CCS(※)が複数の調達分野について、どのように取組を進めれば良いのか、分かり易いガイドを作成・公表しています。
※CCS:英国では、英国内閣府が所管するエージェンシー(executive agency)の一つCCSが、調達政策において重要な役割を果たしています。具体的には、中央政府や地方政府、それ以外の公的機関が共通して調達するモノ・サービスのフレームワーク合意に関わる調整や、中小企業の公共調達への参加促進等、各機関の調達改善に向けた様々なサポートをしています。
今回はこのCCSが作成・公表しているガイドの中から、オフィス関連調達に係る内容を簡単に紹介します。
同ガイドでは、オフィス関連調達における取組を、以下の4つのステップで整理しています。
・第1段階:オフィス関連機器等の使用状況(データ)を把握する
・第2段階:オフィス関連機器等の使用を削減し得る場面や、改善策の推進に重要な役割を果たす者を特定する
・第3段階:改善策を実行する
・第4段階:オフィス関連機器等のライフサイクルに渡り改善策を実行する
興味深い点は、第1段階のデータ把握において、コピー機の使用台数等を把握するだけでなく、オフィスにおける情報伝達に関わる様々な機器・ツールを幅広く把握することが推奨されている点です(例えば、コピー機やパソコンの電力消費量だけでなく、郵便物や宅配便の利用状況、配送の際に使用する車の台数や燃料の種類等も把握することが勧められています)。
仮にコピー機やパソコンの電力消費量が削減されたとしても、代わりに郵便物や宅配便の使用が増加したり、配送頻度が増えたりするならば、全体としての温室効果ガスの削減には繋がりません。
改善策の対象とする調達物品を一つ特定し、着実に改善を促すことも重要ですが、改善策が全体として有効に機能するよう、複数の調達物品・サービスを幅広く特定し、検討を進めることも重要でしょう。
カーボンニュートラルという目標に照らして、どのような複数の物品・サービスを同時に検討することが効果的なのか?慎重に検討して着実に計画を実行する必要があるのではないでしょうか。
(出典)
CCSウェブサイト、環境省ウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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