Column166 (9/30):新型コロナウイルス関連の調達に係る会計検査(2)(米国)
Column165「新型コロナウイルス関連の調達に係る会計監査(英国)」では、英国会計検査院(National Audit Office)が、新型コロナウイルスに関連する調達についてどのような対応(会計検査等)をしているのか、紹介しました。
今回は米国会計検査院(Government Accountability Office、以下GAOという)が新型コロナウイルスに関連する調達についてどのような対応をしているのか、その一部を紹介します。
米国では、2020年3月、新型コロナウイルス対策としてCoronavirus, Aid, Relief and Economic Security (CARES) Actが成立しました。
CARES法の成立を受けて、各府省等では(各自の裁量で)2020年9月迄のパンデミックの間に生じた、契約相手方の有給休暇に関わる費用を償還することが可能になりました。
そこで、GAOは以下の2点について検査を行っています。
1) 各府省及び行政予算管理庁(Office of Management Budget、以下OMBという)の費用償還に関わるガイダンスの内容が統一的であるか?
2)各府省における7月20日迄の費用償還の報告状況は?
初めに、1)費用償還に関わるガイダンスについて、GAOが3月20日から7月上旬にかけてOMBと7府省のガンダンスを検証したところ、それらの内容はほぼ統一されているものの、いくつかの箇所(償還費用の算定比率に利益等を含めるか否か等)で違いが見られた、とのことです。
そこで、2020年7月14日、OMBはこれらの違いに対応するための追加的なガイダンスを示しています。例えば、上記利益の取り扱いについては、一般的に利益等は償還費用に含まれないことがガイダンスで明記されました。
次に、2)各府省における7月20日迄の費用償還の報告状況について、OMBは有給休暇に関わる費用を償還した場合、償還費用の追加支払いによる契約変更を、連邦政府の調達データベース(Federal Procurement Data System- Next Generation、以下FPDS-NG)で修正報告することを推奨しています。
しかし、実際には、例えばエネルギー省では約550百万ドルの費用償還を行っているものの、契約変更せずに既存契約の範囲内で調整したため、FPDS-NGには費用償還の実態が反映されていなかった、とのことです。
GAOがインタビューした担当者のうち、国防総省(Department of Defense、以下DODという)とエネルギー省を除く府省は、これらの費用償還が多額にはならないと推測しているものの、DODは数百万ドルにのぼる要望があると推測しているとのことです。
我が国では、CARES法のような、契約相手方の有給休暇に関わる費用償還を可能にするような特別な法律はありません。
しかし、新型コロナウイルスへの対応として、既存契約の履行方法や履行時期について様々な変更が行われていると推測されます。
これらについて、例えば政府電子調達(GEPS)を活用して全体的に事後的な検証を可能にしたり、行政事業レビュー等を通じて一部でも事後的な検証を可能にしたりする等、公共調達における新型コロナウイルスへの対応について何らかのモニタリングが必要ではないでしょうか。
(参考資料)
Government Accountability Officeウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
コメントを残す