Column154 (2/26):持続可能な調達(デンマーク)
2015 年、国連で2030年に向けた持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals。以下、「SDGs」という)が合意されました。
SDGsは、17目標と目標を達成するための具体的な取組(169ターゲット)から構成されています。
この目標の一つとして「12:持続可能な消費と生産を保証する」があり、目標に向けた具体的な取組として「12.7:国の政策・優先事項に沿って持続可能な調達方針を推進する」等が掲げられています。
今回は、このSDGsに先駆けて、持続可能な調達に取り組んでいるデンマークの首都コペンハーゲン市の事例を紹介します。
コペンハーゲン市では、持続可能な社会に向けた戦略の一環として、オーガニック食材への転換を進めています。
2013年、コペンハーゲン市は、80箇所の公的な大量調理施設(学校や高齢者施設等の公的機関に1日約20,000食を提供)における食材調達において、100%オーガニックで旬な果物、野菜を高く評価する入札を行いました。
入札は価格と質の両方を評価する方式(価格40%、品質35%、食材の種類35%)で、食材の品質(サンプルとして提供された食材の質、オーガニックの認定、リサイクル可能なパッケージの使用等)や、配送に使用する車両(環境に配慮した車両、燃料)について評価されました。
結果、入札に参加した7者のうち、要件を満たした2者から1者が選定され、2年契約(最大2年間の延長可)が締結されました。
ちなみに、オーガニックで旬な食材を調達することで、調達金額は高くなるのでは?と思われるかもしれません。
コペンハーゲン市では、旬な野菜の量を増やす一方、加工食品や肉の量を減らし、食材廃棄率も低下させることで、調達金額は以前と同じ水準に留めたとのことです。
もちろん、これらを可能にするための調理担当者の調理技術の向上は、別事業で実施されています。
取組当初は、加工食品の使用等により調理担当者の調理技術が低下していたため、600万ユーロ(約7億円)の予算を投じて、市内全900箇所の調理担当者のメニュー作りや調理技術の向上に向けた取組が実施されたとのことです。
単にオーガニック食材を重視した仕様に変更するだけでなく、食材を有効に活用し得る人材育成や処遇の改善、そしてそれらを支える生産者や外部のコンサルタント等、様々な立場の人を巻き込むことで、2016年には1日80,000食のうちオーガニック食材の使用率88%を達成したと報告されています。
もちろん、デンマークの食料自給率は生産額ベースで300%で、国内で生産された農産物の約65%を輸出しているため、この取組や目標設定が日本にそのまま活用できる訳ではないと思います。
ただ、公共調達を活用して、社会課題にどう対応していくか?この視点を持つことは重要ではないでしょうか。
(出典)
Food and Agriculture Organization of the United Nationsウェブサイト、農林水産省ウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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