toggle
2018-09-12

Column101 (9/12):米国連邦政府の競り下げ(米国)

米国連邦政府では、一部のモノ・サービスを競り下げ(reverse auction)という手法で調達しています。2017年度は少なくとも15億ドルのモノ・サービスが競り下げで調達されました。

競り下げとは、一定時間内に、競争参加者が他の参加者の最低価格を確認し、何度でもより安い価格を提示できる手法です。

今回は、連邦政府で実施されている競り下げの課題を検査した、米国会計検査院(Government Accountability Office、以下、「GAO」という)のレポート“REVERSE AUCTIONS: Additional Guidance Could Help Increase Benefits and Reduce Fees”(2018)の概要を紹介します。

GAOは、連邦政府の過去4年間の競り下げの実績、連邦政府の中で競り下げを多数実施している5機関(国防総省、国土安全保障省、内務省等)の最近の事例(40件)、契約担当者へのインタビュー等により、以下の点を検査し、競り下げを利用する際のシステム利用料に関わる課題を指摘しています。

(1)競り下げの実施状況と得られた便益
・連邦政府全体の競り下げの実績は、2013年度から2017年度にかけて減少している(34,000件から19,000件、19億ドルから15億ドル)。

・詳細分析した2016年度の実績では、競り下げ(金額及び件数ベース)の約70〜75%において、複数の事業者が複数回価格を提示していた。一方、複数の事業者が1回ずつ価格を提示している場合は約5%、1者が1回又は複数回価格を提示している場合は約20〜25%程度であった。

・連邦政府の中で競り下げを多数実施している5機関の競り下げによる削減効果は、10,000万ドル(2016年度)であった。

・競り下げの便益について、契約担当者のインタビューでは、特に契約事務の繁忙期に、競り下げは事務コストの削減に寄与していると指摘されていた。

(2)競り下げを利用する際のシステム利用料
・連邦政府の中で競り下げを多数実施している5機関の競り下げシステム提供事業者(※)に支払う利用料は1,300万ドルであった。

※連邦政府は、競り下げシステムを提供する事業者(8社)のシステムを利用して競り下げを実施し、システム利用料を支払っています。

・しかし、GAOがインタビューした契約担当者(30名)のうち28名は、システム利用料の仕組みについて十分理解していなかった。

このような、利用料の仕組みに対する理解不足を踏まえて、GAOは、契約担当者への利用料の仕組みに関する周知徹底等を勧告しています。

日本でも、かつては競り下げが試行されました。競り下げという手法についての確たる評価は難しいですが、米国連邦政府では、担当者の声として、競り下げは繁忙期の事務コスト削減に寄与する、とされています。

公的機関の調達は年度末前後に発注が集中するため、競り下げを含めて、繁忙期における事務コスト削減策を幅広く検討することは重要でしょう。

(出典)
Government Accountability Officeウェブサイト
内閣官房ウェブサイト

Social Policy Lab㈱
川澤良子

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA