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2018-03-15

Column86 (3/15):クラウドサービスに関するフレームワーク合意(英国)

Column28「公共調達における付帯的政策(2)(G-cloud)(英国)」では、英国中央政府が取り組んでいる、政府機関向けのクラウドサービスに関するフレームワーク合意を紹介しました。

はじめに、フレームワーク合意とは、「2006年の英国公共契約規則に規定された“長期指名候補者と事前合意制度”のことで、長期指名候補者(フレームワーク企業)を選定した上で、これら企業との間で4年を限度とする一定期間内の個別発注(コールオフ)に関する受注者及び契約額の決定方法、契約条件等(フレームワーク)に予め同意する方式」です。

クラウドサービスに関するフレームワーク合意は、クラウドサービスを提供するサプライヤーと政府が基本的なサービス利用についての合意を結び、合意を結んだサプライヤーは、オンライン市場(Digital Marketplace)にサービス価格、サービスの内容、契約条件等を登録することができます。

政府機関は、既に登録されているサービス価格等を基にサービスを利用するか決定し、利用した場合は、利用した分のサービス料だけ支払うことになります。

2018年3月、英国中央政府は、クラウドサービスに関するフレームワーク合意について、新たな参加者を募るため、同年4月に入札を行うことを発表しました。

これにより、既にフレームワーク合意に参加している企業(2,856社、うち90%は中小企業)は、これまでのサービス内容や価格をアップデートすることができるとともに、新規中小企業のフレームワーク合意への参加が可能になります。

フレームワーク合意は、中央政府、地方政府、NHS Trust、その他公的機関という多数の公的機関がクラウドサービスを調達することができる仕組みです。

クラウドサービスのように新規中小企業が多く存在するサービス分野において、公的機関の市場(600百万ポンド規模)は魅力的かもしれません。

日本でも、Column18「新規中小企業の受注機会増大に関わる取組(米国)」で紹介したとおり、改正官公需法に基づき、新規中小企業者への配慮(入札の際に実績を過度に求めない、少額随意契約の際に新規中小企業者を見積先に含める等)や「ここから調達サイト」(創業・設立10年未満で行政機関との取引を希望する新規中小企業者を検索することが可能なサイト)の開発・運営等が行われています。

「ここから調達サイト」は、新規中小企業者を検索するサイトで、登録企業は3,900社(2018年1月時点)を超えているとのことです。

ただ、英国中央政府のクラウドサービスに関するフレームワーク合意の取組を踏まえると、例えば、発注しやすいよう「ここから調達サイト」の営業品目をより細分化したり、各社の提供価格(基本価格)を掲載したり、中央政府だけでなく独立行政法人や地方公共団体等もサイト上で(少額随意契約の範囲内の)発注が可能な仕組みを実装する等、公的機関、参加企業ともによりメリットのあるツールへの更なる改善が必要かもしれません。

(出典)
Crown Commercial Serviceウェブサイト
国土技術政策総合研究所資料第908号「英国・米国における包括・個別二段階契約方式-フレームワーク合意方式(FA)と数量未確定契約方式(ID/IQ)-」

Social Policy Lab㈱
川澤良子

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