Column80 (1/11):イノベーション促進に向けた公共調達(8)(EU)
Column70「イノベーション調達に関する通達(EU)」やColumn77「イノベーション調達に関する指針(EU)」では、イノベーションの促進に向けて、公共調達を活用するEUの取組を紹介しました。
今回は、政府機関等でニーズがあるものの、市場で販売されていない革新的な製品やサービスを調達するため、商業化前の開発初期段階(プロトタイプの開発等)から公共調達を活用するイノベーション調達(Pre-Commercial Procurement、以下「PCP調達」という)を紹介します。
PCP調達の対象は、ヘルスケア、交通、セキュリティ、ICTシステムなど様々な分野に及び、革新的な技術を通じて、これら分野の公共サービスの改善が図られています。
2016年度のPCP調達の規模は約120百万ユーロと、大規模な取組となっています。
そのため、PCP調達の効果検証も進められており、以下のような効果が主なものとして示されています。
・PCP調達に関わる契約の71%は中小企業者との契約。これは、EUの公共調達全体の中小企業者との契約比率と比べて、約2倍超であり、中小企業者に新たなマーケットを提供している。
・PCP調達に関わる契約の31%は多国籍企業との契約。これは、EUの公共調達全体の多国籍企業との契約比率と比べて、約25倍であり、多国籍企業の成長等に寄与している。
・PCP調達に関わる契約の32%は大学や研究機関を含めたコンソーシアムとの契約。
・ほぼ全ての応札者はEU内で研究開発の実施に関わる各種契約を締結しており、域内の成長と雇用確保に寄与している。
・発注者が設定した質と効率性の要求事項を満たしている。
PCP調達は、EU拠出のPCP調達だけでなく、各国でも独自に取り組まれているため、上記の効果はEUが拠出しているPCP調達のみの効果ですが、公共調達を活用した取組の効果を定量的、定性的に把握・検証することは重要でしょう。
(出典)
EUウェブサイト
Social Policy Lab㈱
川澤良子
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